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フロンティアを駆け抜けて
歪んだ慕情
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がわたしの言うことを聞いてくれると約束すればですが。もし断れば……わかりますよねぇ?」

 アルカはウツボットの体を指さした。ウツボットの体の中は溶解液で出来ている。頭の葉からボールを落とせば溶解液の中に落ち、ボールは溶ける――中のポケモンも一緒に。それを想像してしまい、怖気が走る。ジェムの様子を見て、アルカは満足げに微笑んだ。

「安心してください、今のは冗談なのですよ。そのつもりなら、わざわざ一個だけ残すなんて真似はしません」
「だったら、なんで」
「私達はあなたのチャンピオンの娘としての地位と、バトルの実力を買っているのです。……あなたのポケモンを殺してしまったら、意味がないでしょう?」

 それにあなたとは仲良くしたいですからね。などといけしゃあしゃあと言う。だから、と続けて。

「バトルしましょう。わたしが勝ったらあなたはわたしに協力する。あなたが勝ったら、ここから出ていって構いませんし、もう二度とこんなことはしないと約束するのです」
「本当に?」
「疑うのなら、わたしをその子で殴り飛ばして出ていけばいいと思うのですよ」

 ジェムに残されたたった一個のモンスターボール。その中にいるのはマリルリだった。

「……もし私が負けても協力しないって言ったらどうするの?」
「おや、あなたは約束を反故にするような人なんですか?まあ、それならそれで構いません。むしろ……」

 アルカの目つきが鋭くなる。鼠を捕えた、もがくのを抑えつけて楽しむ猫のような目をしている。

「どうしても役に立ってくれないというのなら、あなたは計画には要りません。もっと強力な毒につけて、死してなお朽ちることのない人形として、私のコレクションに加えてあげます。むしろ私個人としてはそうしたいのですがね」
「……!!」

 冗談には聞こえなかったし、何よりその言葉には慣れがあった。人間を毒殺して、収集する。ジェムの理解を優に超えたことを、自分とそこまで年が離れていないであろう目の前の少女は平然と行う。そんな人物と相対していることに恐怖感を覚えざるを得ない。

「ルリで、あなたに勝てっていうのね」
「ええ、そういうことですよ?何しろあなたはチャンピオンの愛娘。一方わたしは親の顔すら知らない一般トレーナー。それくらいのハンデはないと勝負になりません」

 ただでさえ1対2。マリルリのタイプは水・フェアリー。そして相手は草タイプに、ウツボットに至っては毒タイプまで備える。水は草に弱く、フェアリーは毒に弱い。相性は最悪だ。親のことを引き合いに出したのは、羨望か、嫉妬か。

(……それでも私は、怯まない)

 昨日の自分なら怯え、彼女の言うことに恭順にしていたかもしれない。だけど、今は自分の仲間を
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