23. 友達と手をつないで 〜赤城〜
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たら……たとえば戦艦棲姫さんだったとしたら、最初にこの鎮守府で目を覚ました時、大暴れして電さんの行為を無にしていたかもしれない。電さんの行為に素直に感謝し、私達と素直に友達になってくれた集積地さんだったからこそ、二人で手を繋いでいられる世界を手に入れることが出来たのだろう。そう思う。
私は、今も『集積地さんを助ける』という決断をした電さんのことを、『甘い』と思っている。確かに命は大切だが、仲間と自分を危険にさらしてまで助けるべき敵の命というものはない。
でも電さんは、『集積地さんを助けたい』という気持ちを貫くために、集積地さんを敵ではなく友達にしてしまった。そして、電さんのその真摯な気持ちは、集積地さんだけでなく深海棲艦たちはおろか私たちまで巻き込んで、敵同士だった私たちみんなを友達同士にしてしまった。
今も思い出す。震える身体で戦艦のロドニーさんの前に立ちふさがり、友達である集積地さんを守り通した電さん。あの時の電さんは誰よりも強く、そして美しかった。だから私はその姿に心を奪われ、ロドニーさんは素直に負けを認め、そして深海棲艦のみんなも胸を打たれたんだ。
「キヤァァアアア」
「あら天龍二世さん。天龍組のみんなと一緒じゃないんですか?」
「キャッキャッ……」
「じゃあ一航戦同士、一緒に晩ご飯までお散歩でもしますか」
いつの間にか私の足にまとわりついていた天龍二世さんを肩に乗せ、電さんと集積地さんを見送る。天龍二世さんとの出会いは、電さんと集積地さんが私にくれたプレゼントだ。
いつの日か加賀さんに出会ったら、その時は新しい一航戦の天龍二世さんを胸を張って紹介しよう。ひょっとすると『一航戦は私と赤城さんだけで充分です』と言い出すかもしれないけれど……その時は、私も電さんを見習って、加賀さんと天龍二世さんが仲良くなるまでがんばろう。大丈夫。二人ならきっと仲良くなれる。
電さんと集積地さんの二人とはだいぶ離れたけれど、それでも二人が手をつないでいるのはよく見えた。二人の絆は強く、太い。遠く離れた私からも分かるほどに、二人は強く結びついている。
未来のことは誰にもわからない。ひょっとすると、今提督が進めている深海棲艦との交渉がうまくいかなくなるかもしれない。あるいは、何かしらのキッカケで再び戦争が始まるかも知れない。その時、深海棲艦は今度こそ人間たちに本気で攻めてくるかも知れない。そんなことが起こらないとは、誰にも断言は出来ないだろう。
でも私は意外と楽観している。あの二人を見る限り、もう人間と深海棲艦との間で再び戦いが起こるということはないのではないか……あの二人が笑顔で手をつないでいる限り、私達が再び戦うことなどないのではないだろう……なぜかそういう確信がある。
逆に言えば、私達は
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