プロローグ〜記憶の映画館〜
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Q.人は死んだらどこに行く?
僕の場合は、この一人ボッチの映画館だ。僕以外、誰の姿もなくて薄暗い。
正面に設置された四角いガラスが、今までの大事な人生の一場面を……次々と投影している。
輝く黄金の尻尾が素敵な狐娘が、生肉を美味しそうに食べている最中に襲われて密猟者に殺されて、守れなかった事を悔いて泣く僕。
活気あふれる狼娘が、戦場で純潔と命を散らして果てる悲劇、そして、地面に転がって無残に死んだ僕。
商売王になる事を夢見る猫娘が、皮肉にも金持ちの家で剥製にされ、無残な屍を晒し続ける現実。
僕の人生は、大事な女の子を守れずに、いつも負けてばっかりだ。
何度死んで、何度転生しても、人生の最後は圧倒的な敗北で彩られている。
……もう疲れた。人生を生きる事そのものに疲れたよ……。
これだけたくさんの犠牲と、辛い思い出を背負っていたら、身体が生きていたとしても――精神が死んでしまいそうだ。
記憶が重くのしかかってきて、考えるのも嫌になってくる。
大事な女の子達が居た事すら忘れないと、僕はこの無限地獄へと陥った人生を生きる自信がない。
そろそろ――頭の中を綺麗に整理しないと、頭痛に悩まされる頃になったという事だろう。
死んで生まれ、死んで生まれ、死んで生まれ、僕の人生には全く終焉の兆しが見えない。
『……記憶を削除するお……?』
すまないな、邪神の皆。
記憶を片付けないと、僕の頭はゴミ屋敷のようになってしまう。
背負った荷物を捨てないと、旅を続けられないんだ。
僕は……もう身軽になりたい……。
『どの記憶を忘れるお……?戦いの記憶を削除するお……?』
邪神が呟くと、狐娘との心温まる日々が投影された。
彼女は生肉が大好きで、舌の上で脂が溶ける馬刺しが大好物だった。
動く度に、大きな尻尾が揺れて動いて、僕の心を癒してくれるムードメイカーさん。
……この記憶ですら、僕の精神に重くのしかかり苦しめる。
僕は百年単位で生きた人生の記憶とともに――狐娘との大切な思い出を削除した。
精神が楽になって、何故か、目から水滴が落ちた。
『次はどの記憶を削除するお……?』
今度は、活気あふれるスポーツ大好きな狼娘の映像が投影された。
白金のような毛艶の獣耳が愛らしくて、下ネタが大好きな……良い娘だった。
力仕事が得意で、いつも僕の隣に居て戦ってくれて心強い良いパトーナー。
……僕は百年単位で生きてきた人生の記録とともに――彼女の事を忘れた。
頭の中が楽になって、リラックスできたのに、目から涙が出て不思議だ。
『つ、次はどの記憶を捨てるお……?』
もう……半分くらい一気に捨てよう……。
そうしないと……僕は……楽しく生きていけない気がする……。
『おいこら!?猫娘の扱いが酷すぎるぞ!?
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