百九 長夜の始まり
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「あそこが入口でしょう」
「よく知っているな。来たことがあるのか?」
「いや。なんとなく」
ただの勘か、と紫苑は呆れ返って、またもやそっぽを向く。おぶさっている身、彼女にはナルトの顔が見えない。
表面上涼しい顔をするナルトは、その実、自分の内にいる【零尾】の暴走を無理やり抑え込んでいた。
沼の国の祠に近づくにつれ、身体の中で零尾が暴れ回る。その原因が【魍魎】の莫大な妖気によるものだとナルトは察していた。
普段ナルトの中で大人しくしている零尾が、【魍魎】の他の闇を促進させる妖気に反応している事は明白だった。
だがその反面、零尾の暴走が激しくなるに従って、ナルトは【魍魎】の位置を把握する事が出来る。よって沼の国の祠が、あの崖に設けられた社だと解ったのである。
「……その話し方、止めろ」
とうとう沼の国の祠に着いたのか、と感慨めいたものを感じると共に、紫苑は不満げにナルトを睨んでやった。
「失礼致しました。不作法でしたね」
「違う、逆じゃ。敬語を止めろと言っておるのじゃ」
首を捻って不思議そうに此方を見遣るナルトから、紫苑は顔を逸らした。
「紫苑、でいい」
即座に荒々しい口調で、紫苑は言い訳した。一語一語区切って怒鳴る。
「お前に、丁寧な口調で話されると、なんだか、気味が悪いのじゃ!普通に話せ!!」
「ですが、雇われている身…」
「雇い主は私じゃ!主の言う事が聞けぬのか!!」
紫苑の久方ぶりの我儘に、ナルトは一瞬呆気にとられた。不思議そうにしながらも、気を許されたような心地がして、ふっと口許に微笑を湛える。
「仰せのままに――――紫苑」
顔を赤くして再びそっぽを向く紫苑を背負い直して、ナルトは軽く跳躍した。
急に岩場から飛び出したナルトに驚いて、彼の背中に慌ててしがみついた紫苑が尖った声を上げる。
「う、うわっ!なにを…―――」
紫苑の非難染みた文句は、祠の前に広がる荒地から次々と姿を現したソレらの正体によって、途切れた。
先ほどナルトが立っていた場所の岩が崩れて、中から何かが立ち上がる。同じく、荒涼とした岩場のあちこちから、ザラザラと砂を零しながら幾つもの影が現れてくる。
砂煙に塗れながら岩だとばかり思っていたソレらは、古代の武人を象った青銅の石像。
辺り一面を覆うほどの数多の兵馬俑が、ナルトと紫苑の行き先を遮るように埋め尽くしていた。
(結界から逃れてきた幽霊軍団の一部か…ッ)
周囲を石像に囲まれながら、ナルトはチッと舌打ちした。
鬼の国の遺跡周囲に張った結界の中に、幽霊軍団のほとんどは閉じ込めた。だが、おそらく【魍魎】自らが力を与えた石像だけは結界から抜け出ていたのだろう。
結界内に残った幽霊軍団の相手は再不斬達に任
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