百九 長夜の始まり
[4/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
断末魔を上げることもなく、蟲の猛攻をその身に受ける。
ギタイの手が救いを求めようと伸ばされ、クスナは思わずその手を掴もうとした。けれど、それすら叶わず、ギタイはその場に倒れ伏せ、それきり動かなくなる。
助けを求めにきたのに、黄泉によって逆に殺されたギタイ。
かつての仲間の亡骸を見下ろす三人は引き攣った顔でゴクリと大きく喉を鳴らす。自分に付き従っていた配下をいとも簡単に殺した当の本人は、何事も無かったかのように、しかしながら聊か脅迫じみた声音でクスナ達に命じた。
「…――今度こそ、必ずや仕留めるのだ」
さもないと、次に死ぬのはお前達だ、と言外に伝えられ、クスナ・シズク・セツナは皆、竦み上がる。
ギタイの死を哀しむと同時にクスナは、かつての黄泉の人柄を偲んだ。それがもうどうしようもない過去なのだ、と身に染みたクスナの脳裏に、あの金色が鮮明に浮かび上がる。
金髪の少年――敵であるはずのうずまきナルト。
黄泉に急き立てられ、地を蹴ったクスナの顔は何事か考えているかのようだった。それは、他の二人――シズクとセツナも同様だった。
しかしながら同じ結論を下している二人に反して、一人だけは異なった考えを持っていた。
その異存が浅はかな考えである事実に気づかずに。
夜の帳がすっかり下り、つつ闇をつき進むナルトの背中で、紫苑はそっぽを向いていた。
足穂がてっきり死んでしまったと思い込んでいた彼女は、ナルトから彼の生存を聞いてすっかり不貞腐れてしまったのだ。
巫女の身代わりになろうとしていた動向を食い止め、足穂の死を防いだと耳にしてほっと胸を撫で下ろした後、それから徐々に紫苑の機嫌は降下してゆく。
色々情けないところを見られたと、彼女はナルトを恨みがましく睨みつけ、先ほど視た【予知】の内容を言い放ってやった。
「新たな予知じゃ」
意識を取り戻す前に視た夢。ナルトの首元から迸る血が紫苑の瞼の裏で静かに弧を描く。
「お前は、首をはねられ、死ぬ」
ちょっとした意趣返しのつもりだったが、ナルトは堪えた様子もなく「はは、それは怖いな」と笑った。微塵も怖がっていないその反応に、紫苑のほうが戸惑って、やがてむすっと唇を尖らせた。
「そんな事より。着きましたよ、紫苑様」
自分の死をそんな事、と一蹴して、ナルトが荒れ果てた崖の下方へと視線を促す。彼の目線を追った紫苑は、自分達がいる岩場から聊か離れた所に設けられている社を見つけた。
岩で造られた小さな社の前で、注連縄から下がる紙垂がひらひらと揺れている。祠の手前に広がる荒れ地にはボコボコとした大きな岩がいくつも並んでいて、不気味なほど寂然としていた。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ