百九 長夜の始まり
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魍魎】を封印出来る巫女は、鬼の国…里の人間を犠牲にしてをも生きていかねばならぬ。そこに私情など関係無い……――これが巫女と我が里の物に与えられた運命」
「…いいのか」
紫苑の震える背中に、ナルトは静かに訊ねた。
「お前はそれで……」
諦念を抱いて寂しげに微笑む紫苑。苦しくても哀しくてもどんなに理不尽な事でも、何もかもを運命と受け入れて諦めているその有り様は、かつての木ノ葉の日向ネジと、そして昔のナルトによく似ていた。
「それでいいのか……紫苑」
今まで敬語を使ってきたナルトからの呼び捨てに、紫苑の心臓が僅かに跳ねる。
思いも寄らぬ言葉を掛けられて、紫苑は困惑して顔を上げた。後ろを振り返った紫苑の目がナルトの目とかち合う。
「――本当に、それでいいのか?」
紫苑に注がれるナルトの眼差しは、酷く切なくて真剣なものだった。
パチパチ、と篝火が闇の中で揺らぐ。
夜間に帰還したクスナ達一同は、揃って黄泉の前で頭を垂らしていた。
輿の上に座していた黄泉が気だるげに自らに従う配下を見遣る。一人足りない事実に、彼はどろんと濁った眼を細めた。
クスナ達の顔が青褪めている事は闇の中でもはっきりと見て取れる。
巫女抹殺の失敗に加え、ギタイまで失ったのだ。大失態である事は間違いなかった。
「申し訳ありません、黄泉様。次こそは…ッ」
深く謝罪するクスナに倣って、他の二人も一様に頭を下げる。
恐々と主を窺うように顔を僅かに上げたクスナの眼前で、最初黄泉は自分の名に何の反応を示さなかった。ややあって、ようやく自分の名かと思い当ったようなその風情に、クスナは目の前の主人がもう、今まで付き従っていた黄泉とは別のモノに成り果てている事実を改めて思い知った。
打ちひしがれているクスナの心中など知らず、黄泉はぼんやりと宙に視線を漂わせる。黄泉の濁った眼窩が見つめるその先から、やがて足音が聞こえてきた。
何者かが近づいてくる気配に、クスナ達が一斉に警戒態勢を取る。何事かと身構えていたクスナは、次第に見えてきた相手の姿に眼を見張った。
「…ッ、生きていたのか!?」
息も絶え絶えで這うように現れたのは、君麻呂との闘いに敗れ崖から転落したはずの、ギタイ。
仲間の生還に歓喜するクスナ達の前、黄泉は何も考えていなさそうな風情で瀕死のギタイを見遣ると、サッと手を翳した。
途端、彼の足元の地面が盛り上がり、ボコボコと音を立ててチャクラ蟲が飛び出てくる。
「出来損ないが…。もう要らぬ」
黄泉の罵り声に従い、蟲が鋭い牙を剥いて、驚くクスナ達の目の前でギタイに襲い掛かった。
既に体力も尽きていたギタイは
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