21. お客さん 〜電〜
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の顔を見なくて済む」
「私もこの鎮守府をやっと離れられるかと思うとホッとするな」
赤城さんは表情を変えず、空になった自分のお茶碗に7つめのお櫃からご飯をよそっていた。
「……」
えらくしょんぼりした感じで空になった自分のお茶碗を眺めるロドニーさん。そのロドニーさんのお茶碗を赤城さんは奪い去り、ご飯を山盛りにしてロドニーさんに返していた。
「ありがとう」
「いいえ」
「本音は?」
「ん?」
「本音です。……帰ることへの」
「……
ロドニーさんはたくわんをボリボリと言わせつつ、少し不機嫌そうな顔をしていた。
「……つまらん」
「へぇ……」
「つまんないのです?」
ロドニーさんって、こんなむすっとした顔でたくわんをぼりぼり言わせる人だったんだ……。いやそれはいいけれど、ロドニーさんのこの返事は意外だった。てっきり早く帰りたがっているものだとばかり思っていた。
「この鎮守府に来て日は浅いが……ここに比べて永田町はつまらん」
「そうなのです?」
「ああ。トップがあの中将だからな。所属する者達に余裕がない」
「確かビスマルクさんもいらっしゃいますよね? あなたたちがかつて沈めた……」
「戦場でのことだ。戦艦だった時代のことは互いに遺恨はない。……だが、そんなことすら互いに話すことも出来ないほど、あの鎮守府では連日の出撃と任務、そして演習の日々だ。失敗すれば解体処分……足を引っ張れば解体処分……そんなところが楽しいと思うか?」
「うう……キツそうなのです……」
「だからつまらん。あそこは本当にただ戦うだけの場だ」
むすっとした顔でたくわんをボリボリと言わせるロドニーさんがなんだか新鮮だ。
「ロドニーさん」
「ん? ボリボリ……」
「ここのたくわん……美味しいですか?」
むすっとした顔でたくわんをボリボリとかじりつづけるロドニーさんに、赤城さんが無表情で話しかけていた。きっと赤城さんは、たくわんの味のことを聞きたいんじゃないのだろうとは思うけど……多分、この二人の間では、その言葉の真意は伝わっているんだろう。
ロドニーさんはご飯が少なめになったお茶碗に熱々のお茶をかけ、お茶漬けにしていた。そのお茶漬けをふうふうと冷ましながら一口すすり、赤城さんに同じく無表情で返事をしていた。
「うん」
その後、赤城さんも自分のお茶碗にお茶をかけてお茶漬けにしていた。私がすでに食事が終わっている中、二人は静かにふうふうとお茶漬けを堪能し、気がつくと空になったお櫃の数が10個を超えていることに気付いた。
「あ、赤城さん……」
「はい?」
「た、食べ過ぎなのでは……?」
「大丈夫です。空母は資材をくうものです。キリッ」
「我々大型艦の燃費を駆逐艦と比べ
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