暁 〜小説投稿サイト〜
霊群の杜
祟り神
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やれない。
『祟り』を見るのは初めてではない。いずれも規模は小さなものだったが…俺が知る限り……。



後日『ちはやぶる』ユーザーのスマホが深刻なシステムエラーによる壊滅的ダメージを受ける事態が起こった。



謎めいた神・アラハバキは親密度が50%を超えた辺りで『我を、探るな』という台詞を口にする。これは所謂『フラグ』という奴らしく、いよいよ恋愛モードに突入するタイミングらしい。その瞬間、アプリが誤作動を起こし、ウイルス的な動きをし始めるそうだ。アラハバキを探ることは誰にも出来なくなる。
―――我を、探るな。笑えない。
被害額は数百億を軽く超えると云われ、史上最大の赤字を出したアプリの開発会社は、自己破産の上倒産したと聞いた。当の奉はここ数日、洞の奥で寝込んで出てこない。こんな大規模な『祟り』を起こしたのは、初めてなのだとか。
「云ってみれば、しゃっくりのような物でねぇ」
『祟り』は自然発生する。『奉に向けて』『被害が及ぶことを知ったうえで』『冒涜を為す』『その冒涜を奉自身が知る』。この条件が揃った時点で、奉の意志とは全く関係なく、その相手に被害が発生するのだ。
「…あれ以来だねぇ」
奉が寝床から半身だけ起こし、斜め上を見上げるような目をする。
「…あれか…」


俺たちがまだ小学生の頃、奉が一度だけ虐めの対象になったことがあった。奉は大して気にしていなかったのだが、その無視っぷりが気に障ったのだろう。虐めはエスカレートしていき、そして…不運ないじめっ子は、奉の『祟り』の餌食となった。その恐ろしさというかえげつなさに、クラス中が震え上がったし俺だってびびったし、もう暫くは思い出したくない闇の歴史なんだが、奉は懐かしそうに目を細める。
「しかし…妙じゃないか」
つい、口に出してしまった。奉がちらりと視線を戻す。
「………何が」
「あのゲームのキャラが妙にお前に似たから『祟り』??ゲーム作った人間はお前の顔や名前を知っているのか?それとも」



「お前、本当にアラハバキなのか…?」



奉は数秒の間、俺と目を合わせると、再び寝床に倒れ込んだ。
「………どうかね。本当の名前なんて、とうの昔に忘れたねぇ………」
そう呟いて目を閉じ、少しすると軽い寝息が聞こえてきた。少し離れた所に居たきじとらさんが、そっと毛布を直した。
つい好奇心に駆られて余計な質問をしてしまった。俺が本当に聞きたかったことは、その先にあったのに。
「祟りは、本当に終わったのかな」
帰り道の石段を踏みしめながら呟いていた。考えても仕方ないし、恐らく奉にとってもあずかり知らないことだ。起こっていない悲劇を畏れてもどうにもならない。



後日『ちはやぶる』キャラクターデザインを担当していたデザイナーが、心臓発作で急
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