祟り神
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何だ、きじとらさんには『裏口』教えてないのか」
実はこの洞には裏口が存在する。俺もすっかり忘れかけていたが、いざという時には、山をぐるりと回って裏側の麓近くに、もう一つの出入り口があるのだ。
「教えるの忘れていた。まさか裏口を使う日が来るとは」
「あーあ、今頃境内の辺りでオロオロしているよ。可哀想に…で、お前は誰も来ないからってここで餓死する気だったのか。見てないと死んじゃう星人か」
「お兄ちゃん、そういうとこあるよね」
「阿呆か。出たわ。麓のコンビニまで」
そこで奇声を発する女の集団に襲撃されて、ほうほうの体で逃げ帰ってきたんではないか。と、俺が淹れた茶を呑み干してため息をついた。
「……まずいねぇ。同じ茶葉と水を使って何故、こんなに違うのやら」
「文句があるなら呑むな」
その言葉すら無視してひたすらおはぎと縁ちゃんの差し入れを口に詰め込み続ける。
「ねぇねぇ、何でこんなことになったのか分かる?」
縁ちゃんが嬉しそうに奉の横に座り込む。
「知らん…だが妙だねぇ、社が荒ぶっている」
腹が満たされて落ち着いたのか、奉が食べる手を休めてふと考え込むような顔をした。
「最近『俺』に対する何か…冒涜行為など、行われていないかい」
「これ!これ見て!」
縁ちゃんが喜々としてスマホをかざした。『冒涜行為』…まぁ、冒涜かな。奉は、いやに真剣な顔で食い入るようにスマホの画面を凝視し続けた。
「……これ、世に出回っているのか」
「アラハバキ、割と人気みたいよ?」
「どうも、お前の容姿と、ここがアラハバキを奉る神社であることなんかが『ちはやぶる』ユーザーの間で拡散されてしまっているな…こりゃほとぼりが醒めるまで、しばらくかかるな」
揶揄い混じりに云ってみるが、奴の顔は強張ったまま動かない。
「……怒った?」
縁ちゃんがぴょこんとポニーテールを揺らして奉を覗き込むが、その表情は全く緩まない。……本当に怒ってるのか?だとしたら俺は、本気で怒る奉を初めて見ることになる。
「―――こりゃ、まずいねぇ」
口の端から息を漏らすように、奉が呟いた。
「……どういう事になるんだ?」
俺が声を掛けた瞬間、洞を埋め尽くす紙の束がズズズズズ…と音を立てて震え始めた。
「始まった。…お前ら、悪いことは云わない」
すっと顔を上げて、奉は俺の目を見返した。…俺は思わず、奉から半歩程引いてしまった。煙色の眼鏡の奥に、何故だろう。紅い光が閃いた。
「そのアプリ、今すぐ削除しろ」
『祟り』を受けるぞ。そう云われて俺も縁ちゃんも速攻でスマホを取り出した。縁ちゃんは削除すると同時にLINEを立ち上げて、何かを打ち込み始めた。飛縁魔にでも連絡しているのだろう。何も知らないユーザーは可哀想だが仕方ない。俺たちには何もして
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