イチゴのフェアリー・テイル
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な、子供の頃からイチゴっていえば『とちおとめ』だし、今いろんなイチゴ出てきてるけど、あの甘さを超えるとなんか、イチゴっぽくないなー…とか」
云い終えた瞬間、俺は自らの失言に気が付いた。
『あまおう』がイチゴのように顔を紅潮させ、俺をすごい顔で睨んでいる。うっわ、やっちまったよ。これ『あまおう』って答えるタイミングだったよ。なにやってんだ俺。
「―――あまおう怒らすとどうなる!?」
「えー?わかんない。怒らせたことないです〜」
まじかよ。えーと、俺あまおうフォローすべきなのか?
「や、いわゆる好みの問題で…あまおう大好きな人も沢山」
言いかけた時には赤い絨毯は既に巻き取られ、あまおうの大名行列は嘘のように消えていた。
「妖精速っ」
「あーあ、怒って帰っちゃった」
「え?え?俺どうなるの?呪われるの!?」
「んー、イチゴ関連以外は普通のおじさんですよ?先輩は、おじさんを怒らせて呪われたことあるんですかぁ?」
「人に呪いをかけそうな危ういおじさんには近寄らないようにしている」
「へぇ〜。あ、気を付けてくださいね」
「呪い!?」
「ううん、足元」
「あしもと…うひゃっ」
あまおうに気を取られて気が付かなかったが、俺の足元で爺さんが動いていた。俺と目が合うと、爺さんはもぞりと腰を浮かして元の位置に戻っていった。やっべぇ、踏むとこだったわ。
……俺の足元には、プラスチックのケースに入った大粒のイチゴが1パック、残されていた。
「―――なに!?」
くれるってことか!?
「良かったですね先輩〜。とちおとめですよ、先輩の好きな」
「へ!?」
「あの方は『とちおとめ』の妖精です」
なに―――!?
「おっさんなのにか!?」
「品種名を考えるのは人間ですから〜。名前はそうですね、運次第です〜。お友達の妖精さんなんか『初恋の香り』とかステキ風な品種名をつけられた中尾彬そっくりなおじさんで」
「気の毒かよ」
「先輩、とちおとめさんに気に入られたみたいですよー。イチゴのパックをくれることなんて、滅多にないんですから〜」
「パックでくれるのかよ…」
なんかイチイチ商業ライクなんだよなこいつら。
「あまおうさんはねー、悪いひとじゃないんだけど、最近人気が急上昇したことでちょっと舞い上がってて、ああやって王様気取りなところがあるんです〜。でも収穫量はとちおとめさんの方が上だから〜、人気は自分の方が上だぞって、いちいち絡んでくるんです〜。それがずっとストレスみたいで〜…」
「…そうなの…」
知りたくなかったそんな妖精界の生々しい内部事情。
「プライド高いひとだから〜、しばらく来ないかも〜」
「お役に立てたみたいで…じゃ、俺帰る」
「また来てくださいね〜♪」
穂香の可愛い笑顔で送り出されて
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