イチゴのフェアリー・テイル
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みる。…うっわガン見だ。身を乗り出してガン見してきてる。なにこれきつい。
「収穫したものを粗末にされると1週間」
「………一週間?」
―――呪われるのか?
「ガン凹みします!」
「凹むのかよ!!」
「凹まれるとその間、イチゴの甘みが減るんです!糖度でいうと9くらいに落ち込みます!」
「糖度で云われても基準が分からん!」
「感覚としてはイチゴの旬が終わる頃『あ、今日のイチゴ外れだ』って感じの妙にサクサクしたやつ買っちゃうことあるでしょ?それです」
「甘さの基準が知りたいわけじゃなくて」
「いいから!お願い!食べてっ!」
結局、ほぼ無理やり食わされる。…イチゴは旨かった。爺さんから毟り取ったのでなければ軽く喜んだ程度に…。
「あ、誰か来る」
俺がガン凹みしている横で、穂香が何処かに振り向いて立ち上がった。
「なに、客来る予定?じゃ俺帰るわ」
「大丈夫ですよ〜、私の客じゃないです〜」
からり、とベランダの窓が開き、赤い絨毯がコロコロコロ…と転がってきた。ふいに爺さんと、穂香の顔つきが険しくなった。
「…また来た〜」
「え…?」
まだ何か変なのが来るのか?固唾を呑んで見守っていると、絨毯は爺さんの手前で正確に止まった。そしてその絨毯の周りに、爺さんくらいのサイズの近衛兵?みたいな恰好をした奴がどどどど…と走って来て等間隔に並び、直立不動の態勢を取った。どうも、物々しい雰囲気になってきたな…
「な、なに?これなに?偉い人!?」
「なんでしょうねぇ、名前のせいかな〜、な〜んかいつも、こういう感じなんですよねぇ〜」
穂香が首を傾げている間に、赤い絨毯の両側に物々しい近衛兵?の列ができた。彼らは槍を掲げて敬礼っぽい姿勢を取る。そして…赤絨毯を踏みしめて、満を持して現れたのは、赤い衣を身にまとい、頭に冠を頂く、丸く太った男だった。おっさんだが、あの爺さんよりは少し若いようだ。
「彼は〜、何でかお爺さんをライバル視してるんです〜。この物々しい登場も、お爺さんへのあてつけかな〜って」
「だから、これ何!?」
「『あまおう』の妖精です」
品種ごとにいるのかよ!!
爺さんは苦虫を奥歯ですりつぶしたような顔で、悠々と歩いてくる王様を睨み付ける。王様は傲岸不遜に肩をくゆらすと、くいっと顎を上げて近衛兵を呼んだ。そして何事かを囁く。囁かれた近衛兵は、かしこまった様子で小さく敬礼をすると、槍を置いて穂香の傍らに駆け寄って何かを耳打ちした。…穂香は一瞬、眉をひそめたが、少し肩をすくめて俺の方を向いた。
「――先輩に、質問だって」
「え」
嫌だよめんどくさい。
「イチゴの品種で一番好きなものを答えよ、だって」
「とちおとめ…かな?」
何故だか自然と口をついて出た。
「実家が栃木だからか
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