イチゴのフェアリー・テイル
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」
「いつもあんな感じですけど〜…イチゴって度重なる品種改良で、常に自分を高めているでしょう〜?果物の中でもストイックな部類の人たちがなんですよ〜。リンゴとかもそう。あんま笑ったりしないです。先輩がさっき云った可愛くて奔放な妖精はぁ〜、桑とか野イチゴとか?努力しない人たち〜」
あぁ、なんか差別意識みたいなのあるんだ。
「…商業ベースに乗せにくい感じってことかな…」
「それそれ〜。こっちがジャムにでもしてやらないと市場に出回る気ゼロみたいな〜。でもって量産される気もゼロ〜」
「ふぅん……で、あの背中にびっしり生えている赤いのは…」
「イチゴです!いつもお弁当に入れてるやつ」
「うっわぁ――――!!!!俺、貰って食ったことある―――!!!!!」
爺さんがかつんかつんかつんかつんと杖を鳴らす。穂香にも睨まれて、俺は咄嗟に口を押えた。
「…ちょっ…え?あんな背中に直に生えてるのを毟って食ってたの?」
「摘みたては美味しいんですよ☆店で売ってるのと違って完熟したのをそのまま株から」
「旨いかどうかは問題じゃないからな!?うるさいと怒るのにイチゴ毟られても怒らないの!?」
「その辺は栽培種の存在意義というか〜…人間との力関係というか〜…」
「ごめん俺よく分からない」
「私も細かい事はよく分からないんです〜。でもほら、怒られないし、美味しいし」
「分からないで食ってるのか…」
俺は…この子の所謂『天然』とは、ある程度モテ戦略として作り上げられたものだと思っていたが…
俺は今、『真の天然』の恐ろしさを噛み締めていた。
「なんかー、私って佐賀出身じゃないですかー。ばぁばがね、1人暮らしは危ないからって、知り合いが住んでるアパート紹介してくれるって云うから〜。四畳半でちょっと狭いけど〜、バストイレ付きでセキュリティは万全なの〜」
「ど、どういう知り合い…」
「なんか〜農協のツテで〜」
「農協!?」
農協め、妖精レベルから管理してんのかよ!!日本のイチゴ旨いわけだよ!!
俺が驚愕の真っただ中に居るというのに、穂香は爺さんの背後に回ってイチゴを毟り始めた。
「うぇ!?」
爺さんも黙って毟られているし。なにこの状況。
「失礼しました、おかまいもしませんで〜。これどうぞ」
―――帰りたい。爺さんの背中から毟り取ったイチゴを受け取りながら思った。もうなんか色々と分からんし、こんなの貰っても食いたくない。ていうか今日は人生で一番イチゴ食いたくない日だ。
「先輩、先輩」
「………なに」
「それ早く食べて下さい」
「え、いや、でも」
なんか気分的に爺さんの背中のイボでも食わされるみたいでどうも…。
「妖精、めっちゃこっち見てますよ!すっごい気にしてます!」
「え?え?」
改めて爺さんの方を見て
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