プロローグ"ウィンドロード"
”ウィンドロード”2
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「・・・どうでしょう?その人に任せられないでしょうか?」
事故の関係者四人・・・ミナヨの父と峠工一、ワカバ、アオバの一家はその女性の申し出に複雑な思いを抱いた。
「私としては・・・それでミナヨが心改めてくれるのなら、喜んで・・・あ、いや、散々甘やかしてアレになったうえに、人任せにして喜ぶも何も・・・。」
「だけど・・・さすがに過酷な気もします。何せ出発地点が出発地点ですし、精神的に・・・。」
「それに、ミナヨさん一人では危険ですわ・・・。」
口を開かないのはアオバ一人だけ。怒っているわけでも心閉ざしているわけでもない。
本当言うと、もう考えたくないのだ。ミナヨのことは許す前に忘れてしまいたかった。
「この旅はミナヨさんにとって、自分を見つめなおすには不足ないと思うのですが・・・。」
「・・・分かりました。峠さんと相談の末、娘に話してみます。」
ようやく腕から痛みが消え始めた日だった。父から、そして峠一家から与えられた反省のための試練。
それは、あの大震災で死んだ一人の人間の遺骨を自転車で生まれ故郷の石川県金沢まで連れて行くことだった。
以前の私なら、面倒くさい、疲れるといってにべもなく拒否していただろう。
だが、今回は断れない。峠一家の宝物を壊した後ろめたさがある。
これをやり遂げよう。そうでなければ私はいつまでたってもひどい女のままだ・・・。
クロスバイクに遺骨を乗せた旅は、正直気が狂いそうになった。
出発地点は、津波に全てを飲み込まれた後の町。まだ行方不明者も多く、まだ瓦礫と土砂の下には大勢の遺体が埋まっているかもしれないという。公園に展示されていて、津波にぶち壊されたSLまでもが転がっていた。
暗い気持ちで出発となった。
そこらじゅう瓦礫やクルマや船の遺骸だらけの海岸線。鉄道の被害も甚大だったが、列車に乗っていて犠牲になった人はごくわずかであったという。
福島県に入ると、今度は津波だけではない、原発事故の爪痕が待っている。
普通ならなるべく迂回ルートを通るところだ。父や工一氏も原発に近いMS市を避けて迂回するよう薦めていた。
だが、私は敢えてMS市へ進んだ。理由はある。
MS市博物館にあるSL・C50。その機関車は遺骨の主と深いかかわりがあったという。
遺骨の主はターゴと呼ばれていたらしい。お調子者だが、義理に厚く、困っている人と見れば放って置けない質だったらしい。
彼は、公園の片隅で朽ち果てて解体寸前だった機関車を寄付金を募って救おうとした事もあった。それがC50だ。
D51などに比べるとほっそりした印象を受けるC50。今はまた塗装が傷み始めていたが、原型を保っていて、いつでも復活しそうだった。だがこれから先、修復の価値ありと、英断してくれる人間に恵まれるのか・・・。
津波で命を落としたタ
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