第40話『暗雲』
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「思い返すと、さっきの人の名前聞いてないじゃん」
「それを言うなら、ボク達の名前だって言ってないよ?」
「あ、そういえば。てか、腕時計直ったのも言えば良かった!」
「もう遅いね」
異世界版ファミレスで昼食を済ませた2人は予定通り、1日中王都を楽しむという計画を実行していた。
そしてその途中、ファミレスで出会った男性の話題を掘り返し、色々と後悔が出てくるという有り様である。
「まぁ、いいか」
「うん」
彼の存在が気になるが追及はしない。どうせ少し世間話を交わした程度の薄い関係だ。
そう思うと、ユヅキとの関係はどうなるのだろうか。話だっていくらもしたし、それ以上の・・・あぁ思い出したくない。
「じゃあ気を取り直して・・・これからどうする?」
危ない記憶を封じ、表情を切り換えてユヅキに訊く。
意外や意外、王都に残るのはいいが…やることが思い付かないのだ。
「ハルトが探険したいって言うなら付き合うけど…」
「んん…それもアリだな・・・あ、そういやあそこの城って観光とかできたりする?」
晴登が指差しながら示したのは、王都の中心にて頂点に佇む城だ。気にも留めていなかったが、あの巨大な存在感が今は気になる。
ファンタジー世界の王道であるお城を探険できるとなれば、それはそれは楽しいことに・・・
「いや、無理だよ」
「ですよね〜…」
ユヅキの指摘に流れるように反応。
王都の中の唯一の城…それは即ち、“王城”に他ならない。晴登の身分は平民、というかよそ者。そんな立場で王城に入ろうなど、不届き千万、身の程を知れというものだ。
よって、このユヅキの答えは予想済みである。
「じゃあさ、少し近くまで行ってみない? それくらいなら大丈夫でしょ?」
「何とも言えないけど…それくらいなら」
「よし、決まりだな」
晴登は口元を緩め、ユヅキに手招き。今から王城の近くに向かうことにする。
ユヅキは渋々だかそれに応じてくれた。
*
明るかった空が、少しばかり暗くなり始める。そろそろ夕方、といったところだろうか。
王城に行こうと歩き始めてから10分。目指していた建造物は、近付けば近付くほどその巨大な存在感をアピールしてくる。
しかし、問題にも気づいた。
「何かやけに人が多くない?」
上手く言えないが・・・王城の手前、20人ばかりの人だかりが出来ていた。その人たちの姿は、大通りで見る人たちと何ら変わりはない。
つまり・・・
「直談判とか、そんなやつ…!?」
稚拙な想像が晴登の頭に浮かぶ。
あの人たちが大通りの・・・言い方は悪いが、一般人であるというのは変わ
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