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テキはトモダチ
20. 初期艦は電 〜電〜
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吹雪型駆逐艦一番艦:吹雪
吹雪型駆逐艦五番艦:叢雲
綾波型駆逐艦九番艦:漣
 暁型駆逐艦四番艦:電
白露型駆逐艦六番艦:五月雨
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選択する艦娘の名前:


『初期艦の子とは長い付き合いになる。彼女たちの性格を把握し、よく考えて……』
『電で』
『いやだから、よく考えて決めろと……』
『電で』
『だからよく……』
『電で』
『分かった! わかったから申請書類に電って書いてそれを……』
『電。早く電。電』
『分かったから書類! 書類書いて!!』

 そうして赴任する鎮守府も決まり、私たちの初対面の日が来た。実は司令官さんは、はじめて私を見た時にちょっとガクッときたそうだ。

「だってそうでしょ。俺が世界で一番カッコイイと思ってた船が、こんなにちっちゃい女の子になっちゃってるんだもん」
「ひ、ひどいのです……」

 そして初出撃。私はその時戦闘そのものには勝利したけれど、どうしても敵の駆逐艦を撃沈したくなくて見逃してしまった。そしたら。

『電、帰投したのです』
『ほい。初めての出撃おつかれさん。敵を撃沈しなかったんだって?』
『は、はいなのです』
『なんで?』
『え、えーと……』
『うん』
『できれば、戦いたくないのです……』
『……』
『沈んだ敵も、出来れば助けたいのです……』
『……ぶふっ』
『司令官さん?』
『あ、いやごめんね。おつかれさん。お風呂入っといで』
『はいなのです。電、入渠するのです』

 司令官さんは私の報告を聞いてぶふっと笑った後、私を責めずに優しく入渠を指示してくれた。あの時のことはよく覚えている。

「どうして笑ったのです?」

 長い間思っていた疑問を司令官さんにぶつけてみた。

「……スラバヤ沖海戦」
「へ?」
「お前さんたち艦娘に軍艦だった頃の記憶があるかはよく分からない。でも、お前さんが敵艦を撃沈しないで帰ってきたって知った時……『沈んだ敵も出来れば助けたい』って言った時、スラバヤ沖海戦の話を思い出した」

 うっすらと覚えている。私がまだ軍艦だった頃の話だ。私の乗組員たちが、海戦で海に放り出された敵軍艦の乗組員たちを必死に救助したその海戦……

「『この小さい女の子は確かに、俺がガキの頃に心奪われた暁型駆逐艦四番艦の電なんだなぁ……』ってなんかホッとしたのよ。そしたらなんか吹き出しちゃって」
「そうだったのです?」
「うん」
「……」
「だからさ。俺は嬉しいのよ。お前さんは確かに敵を撃沈するのを極端に嫌がってるけど、それは、俺が大好きだった……俺のヒーローだった電のままなのよ」
「……」

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