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テキはトモダチ
20. 初期艦は電 〜電〜
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ーさんから押された『失格』の烙印と、中将さんからの『ヘタレ駆逐』の暴言……敵を倒すことの出来ない駆逐艦は……集積地さんたちを倒すことができなかった私は、艦娘失格なのだろうか……。

 私の言葉を受けた司令官さんは、窓の外を見た。さっきの作戦はお昼前だったはずだが、今はもう夕暮れ時。窓の外は夕焼けで赤い。まるで集積地さんが帰りたいことを私に告白したときのように真っ赤だ。

 その夕焼けを眺めながら、司令官さんは帽子を脱いで制服の上着のボタンを開いた。

「大淀。ちょっと席を外すね」
「了解です。どちらへ?」
「俺の可愛い初期艦とデート」

 ぇえ!? デートなのです!? 司令官さんと!? 突然なにごとなのです!?

「了解しました。行ってらっしゃい」

 大淀さんももっと狼狽えないのです!!? と私があたふたしていると……

「ほら。おじさんとデートに行こうねー」

 と司令官さんが私の手を取って、強引に執務室から連れ出した。

「はわわわわわわわわわ……司令官さんとデートなのです!?」
「集積地には内緒よ? じゃないとおじさんヤキモチやかれちゃう」
「ぇぇええええっ!?」

 司令官さんに強引に手を引っ張られ、為す術無く何処かに連れて行かれる私。集積地さんと違ってゴツゴツした男っぽい強引な手をしている司令官さんの手は冷たく、でもなぜか集積地さんと同じく繋いでいて胸が暖かくなるような、そんな不思議な感覚を覚えた。

「はわわわわわわ……司令官さん! そんなに引っ張ったらダメなのです!」
「大丈夫大丈夫。すぐ着くからもうちょい我慢」
「電は大丈夫じゃないのですー!!」

 司令官さんに強引につれてこられた場所……それは、私と集積地さんの思い出の場所で、夕焼けがとてもキレイな演習場だった。

「お前さんたちは自力で見つけたみたいだけどさ。ここは俺もお気に入りだったのよ」
「そうなのです?」
「うん。夕焼けがキレイだから」

 口に出したら怒られそうだけど……そう語る司令官さんの横顔は、なんだかいつもよりテカテカして見えた。

「おじさん、もう歳だからね……」
「電の心を読まないでほしいのです……」
「ついでに加齢臭も……」
「それ以上は言わなくてもいいのです」

 2人で並んで夕焼けを眺める。私はそばの埠頭に腰掛けた。潮風が心地いい。

「電」
「はいなのです」

 司令官さんが、私の方に顔を向けずに私に呼びかけてくれた。いつものようにとっても優しい声だけど、いつもと違って覇気や気持ち……そういったものを感じられる声だった。

「ありがとう。お前さんのおかげで、俺たちは仲間殺しをしなくて済んだ」

 はじめ私は、言われている言葉の意味がよく分からなかった。


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