初めてのファン?
[1/4]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
ジェムの朝は早い。自然に彼女が目を覚ますと時計は朝6時半を示していた。ダイバはまだ眠っているようだ。自分の家のそれよりもふかふかのベッドから出る。
「おはよう、ラティ」
ボールの中でまだ寝ているラティアスに声をかける。起こすことはしない。自分のポケナビを見るとそこには、大量の着信履歴が残っていた。ジェムの母親からだ。
「あ……そうだ。夜に電話するって約束してたんだ……」
電話をかけてこないジェムを思ってのことだろう。母親はジェムのことになると心配性なところがあるため、不安にさせてしまったはずだ。すぐにメールを打ち、自分の無事を知らせる。
「後で電話してごめんなさいって言わないと」
そう言いながら服を着替えて、モンスターボールを腰につける。朝起きたら目を覚ますために軽く散歩をするのが日課になっていた。ホテルから出て、ゆっくりとバトルフロンティアの町を歩く。さすがにこの時間は人通りもほぼなく、ジェムにバトルを挑んでくる者はいなかった。
「今日はどの施設に挑戦しようかな?」
近くには天まで伸びる塔や、ピラミッドのような形をした施設がある。それらでのバトルに思いを馳せながら歩いていると、前の方から歩いて来た女の子に声をかけられた。
「あの……あなた、ジェム・クオールさんなのです?」
「うん、そうよ。……私とバトルするの?」
声をかけてきた少女はジェムより少し背が高く、ピンク色の長いくせっけを無理やりツインテールにしている。ドラコの立派なマントとは違った、ぼろきれのような茶色い布を纏っていて服装はよくわからない。少女は警戒するジェムに対して慌てて手を前に出して振った。。
「いえいえ、とんでもないのですよ。……昨日のあなたのポケモンバトル、見させてもらいました。素晴らしかったのです」
「え?その……ありがとう」
施設内のポケモンバトルの様子がいたるところで映し出されているのは知っているが、見知らぬ人にバトルを褒められれば面喰いながらも照れてしまう。
「一日で二人ものブレーンに挑戦し、一人には勝利。……わたし、あなたのファンになっちゃったのです」
「ファ……ファン。ありがとう……」
むず痒い言葉だ。だけどチャンピオンの父を持つジェムにとっては、父のように誰かに憧れられることに憧れていた部分もある。照れくささに顔を赤らめるジェム。
「よければゆっくり、お話しさせていただきたいのですよ。構いませんか?」
「うん。いいわよ。ファンは大切にしないといけないってお父様も言ってたし」
「ふふ、ありがとうございますですよ」
ジェムの返事を聞いた少女は、瞳孔を見せない細い目で柔らかく微笑んだ。丁度近くにベンチがあったので、2人
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ