暁 〜小説投稿サイト〜
フロンティアを駆け抜けて
初めてのファン?
[4/4]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話
ェムにかかる。さっき飲んだお茶の香りを強くしたような、甘ったるい匂い。それを嗅ぐと意識がぼんやりとする。

「そのお茶にはわたしのポケモンのしびれごなとねむりごなが入っています。一口でも口をつければ、このようになるのですよ。私以外はね」
「なん、で?」

 ジェムの頭に浮かんだのはこんなものを飲まされた怒りではなく、疑問だった。それを聞いたアルカは心底愉快そうな、愛おしそうな笑みを浮かべた。ただしその愛は、今までジェムが受けたことのあるものとは明確に違っていた。それは例えるなら、小さな雄の蜘蛛を見る雌の蜘蛛のようだった。

「昨日あんな目に合ったのにまだ気づかないのですか?鈍いですねえ……でも、そんなところも可愛いです」
「……!」

 そこまで言われて、ジェムはある可能性、いや真実に気がつく。だけど体が、口が、麻酔でも受けたように動かない。まだ起きてから30分もたっていないのに、徹夜した時のように瞼が重かった。

「まあそろそろ喋れないでしょうし、続きはもっと落ち着いて話せるところにしましょうか。でないと、アマノもうるさいですしね」
「……」
 
 アルカが彼の名を呟いた時、既にジェムの意識は闇に堕ちていた。マスキッパの蔦がやんわりとジェムの体に巻き付き抱える。ついでに腰につけているモンスターボールを一つだけ残して取っておいた。

「さあ、もう一度来てもらいましょう。わたし達の住処へ。だけど安心してください。わたしがいる以上、あなたをあの男の趣味には付き合わせないのです」

 意味深に呟いて、アルカは自分とアマノの隠れ家まで戻っていった。




「……あれ、いない」

 ダイバの朝はジェムに比べると遅い。彼が目を覚ました時、時計は朝8時を示していた。そして隣のベッドにジェムがいない。ベッドに触ると、そこに熱は残っていなかった。つまり、ベッドから出てそれなりに時間は立っていることになる。なのに戻ってきていないのは不自然だと思った。

「……面倒くさいな」

 勝手な行動をするジェムにため息をつく。それでも放っておけないのはやはり執着からか。ダイバはのそのそとパジャマから着替え、そして外へ出ていった。彼女を探すために。
[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ