巻ノ六十五 大納言の病その十三
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「次第に。そうされては」
「・・・・・・出来ぬ」
これが秀吉の返事だった。
「それはな」
「では」
「まずはあ奴が頭を下げてからじゃ」
このことに意固地なまでにこだわる秀吉だった、それ故に家康に対してもあくまでこう言うばかりであった。
「それからじゃ」
「そう言われますか」
「若し徳川殿がそう言うならじゃ」
「利休殿をですか」
「説得してじゃ」
そしてというのだ。
「頭を下げさせてもらいたい」
「さすれば」
「うむ、その様にな」
あくまでこう言ってだ、秀吉は聞かなかった。家康はそれからも話をしたが結局秀吉は聞かず秀吉は横から来た小姓の話を聞いて家康に言った。
「申し訳ないが用が入った」
「と、いいますと」
「母上がな」
秀吉の実母である大政所がというのだ。
「少しな」
「では」
「折角来てくれたのに済まぬ」
「いえ、そうしたことでしたら」
「またあらためてな」
「はい、それでは」
「話をしてもらいたい」
こう言ってだ、秀吉は家康達を去らせ自身は母親の見舞いに急行した。それで家康は大谷と石田に別の部屋でこう言ったのだった。
「これはな」
「難しいですか」
「どうにも」
「以前の関白様なら乗られたしじゃ」
それにと言うのだった。
「大納言殿ならな」
「そう出来た」
「そう言われますか」
「うむ」
その通りというのだ。
「やはりわしでは力不足じゃ」
「では利休殿は」
「どうなるでしょうか」
「危ういやもな」
家康は眉を曇らせて言った。
「これは」
「ですか」
「そうなりますか」
「何か急じゃ」
秀吉の様子がというのだ。
「利休殿についてな」
「急いで、ですな」
「頭を下げてもらいたいですな」
「そうした感じがしますな」
「どうにも」
「だからな」
それ故にというのだ。
「これはな」
「危ういですか」
「利休殿は」
「そんな気がする」
まさにというのだ。
「だから我等も急ぐべきであるが」
「それは、ですか」
「難しくなりましたな」
「大政所様もご高齢ですし」
「あの方もとなりますと」
「そうやも知れぬ」
また言った家康だった。
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