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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百四話 キフォイザー星域の会戦(その2)
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良い。
包囲される分だけこちらも損害は出る。だがそこは耐えなければならない。V字型の陣が縦長になるほど、こちらの予備のほうが先に敵を攻撃できる位置に着く。予想外の事だが勝機は十分にあるようだ。ただ向こうもそれなりの対応策を取ってくるだろう、油断は出来ない。
面倒では有るが噛んで含めるようにして説明した。ノルデンは“危険だ”、“予備を使うべきだ”とぶつぶつ言っているが、以前より語調は弱い。どうやらこの男は臆病なようだ。耐える事が出来ない、だから勝負を早く付けたがるのだろう。敗戦となれば誰よりも先に逃げ出すに違いない。所詮は貴族のボンボンだ。
「ザッカートの言う通りだ。敵の中央は我等で押し込もう」
リッテンハイム侯がそう言った時だった。オペレータが驚いたような声を上げた。
「ヒルデスハイム伯の艦隊が動きます!」
「馬鹿な、何を考えている……」
呆然とするリッテンハイム侯の声が艦橋に流れる中、喜色に溢れたノルデン少将の顔が見えた。
帝国暦 488年 1月31日 0:00 ヒルデスハイム艦隊旗艦アイヒシュテート ロタール・フォン・ヒルデスハイム
「閣下、リッテンハイム侯より通信です。スクリーンに投影します」
オペレータの声とともにスクリーンにリッテンハイム侯の姿が映った。
『ヒルデスハイム伯! 何を考えている、元の位置に戻るのだ!』
「戻れません。今こそ私の手で勝利を確定するのです!」
『馬鹿な、もう少しで勝てるのだ、もう少し待て!』
「もう少しで勝てる? 今勝っているでは有りませんか、何を待つのです。通信を切れ」
通信が切れると同時にオペレータが心配そうに問いかけてきた。
「閣下、よろしいのでしょうか」
「構わん、これ以上黙って見ている事などできん。私の手で勝利を確定するのだ! そうなればリッテンハイム侯も文句は言わん」
そう、私の手で勝利を確定するのだ。大体何故私が予備なのだ。予備ならヘルダー子爵、ホージンガー男爵のどちらかで十分だ。私こそ最前線で戦い、勝利をもたらす人間だ。それなのに予備? おまけにもう少し待て? 待っていたら戦闘は終わっているだろう。私に武勲を立てさせないつもりなのだ、連中は。そんな事は断じて許さん。私こそがこの戦いで英雄になるべきなのだ。
帝国暦 488年 1月31日 0:00 ルッツ艦隊旗艦 スキールニル コルネリアス・ルッツ
「敵、予備部隊を動かします」
「何!」
オペレータの声に戦術コンピュータのモニターを見ると確かに敵は予備部隊を動かしている。我が軍の右翼を攻撃しようとしているようだ、どういうことだ? 勝機だと思ったのか?
「閣下、こちらも予備を動かしましょう」
「そうだな、参謀長、シュタインメッツ少将に連絡し
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