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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百四話 キフォイザー星域の会戦(その2)
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「ノルデン少将、敵にも予備が有ることを忘れるな」
「敵は戦意が有りません。見ての通り後退し続けています。敵の予備など恐れるに足りません」
「予備を使うのは後だ、今は敵を押し込め」

リッテンハイム侯はノルデン少将の意見を却下した。ノルデンは不満そうにしている。ラーゲル大将は沈黙したままだ、艦隊戦は素人だ、口を出すべきではないと考えているのだろう。

リッテンハイム侯が俺を見ている、微かに俺が頷くと侯が頷き返してきた。もしかすると侯にも迷いが有るのかもしれない。侯の判断は間違ってはいない、まだ敵には余力がある。今予備を動かせば、当然敵も予備を動かすだろう。敵の予備は約一万五千隻、こちらは約一万隻、兵力と言い錬度と言い圧倒的な差がある。

予備同士がぶつかればあっという間に撃破されるだろう。ノルデンは味方が優勢に戦闘を進めているため、その辺りが見えなくなっている。分かっていた事だがノルデンの戦術能力はかなり低い、頼りにならん小僧だ。

「リッテンハイム侯」
「何だ、ザッカート」
「敵の狙いはヘルダー子爵、ホージンガー男爵の艦隊でしょう。我々とクライスト、ヴァルテンベルク大将の三個艦隊を引き寄せ、ヘルダー子爵、ホージンガー男爵を孤立させた上で撃破しようとしている」

「うむ、私もそう思う」
「クライスト、ヴァルテンベルク大将の艦隊に彼らを支援させ、正面の敵は我々だけで押し込むべきかと思いますが」
俺の言葉にノルデン少将が反対した。

「馬鹿な、それでは我々は敵中深くに孤立するではないか。リッテンハイム侯、今こそ予備を使うべきです」
馬鹿が! 黙っていろ小僧! 今説明してやる。

「我々が敵の本隊を押せば、敵は耐え切れずに両隣の艦隊に支援を求めるでしょう。そうなれば敵の両端は孤立します。予備を使うのはその時です」

元々は中央の三個艦隊で敵を押し込むつもりだった。だがクライスト、ヴァルテンベルク大将が意外に良くやる。ヘルダー子爵、ホージンガー男爵の艦隊を援護しつつ正面の敵を押しているのだ。そのため味方の両端の艦隊は戦線を維持し続けている。

このままの流れを維持すべきだ。敵の中央はルッツ提督だろうが、彼だけでは我々を抑えきれない。当然両脇の艦隊の支援を必要とするはずだ。敵の中央の三個艦隊は連携を強めようとすればその分だけ敵の両端の部隊は孤立する。

クライスト、ヴァルテンベルクがヘルダー子爵、ホージンガー男爵を支援して彼らを押さえ込む。機を見て予備を動かし右翼か左翼のどちらかを包囲して殲滅する。敵も予備を動かすだろうが、そこは時間との勝負だ。遣り様は有る。

両軍はV字型になりつつある。お互いに予備は本隊の後ろに置いているが、本隊が押し込まれている分だけ敵の予備は両翼からは遠くにある。更に強く押し込めば
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