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第六話
第六話 ペットの餌その一
「さて、小田切君」
「今度は何考えてるんですか?」
小田切君は博士に対してつっけんどんな返事を返した。博士はタロとライゾウの世話をしていて小田切君は洗濯物を干していた。白い服には似合わない家庭的な風景であった。
「犬と猫の餌だが」
「それなら買い置きがありますよ」
「もう食べたよ」
「だから別にいらないよ」
「いやいや、それで話が済んではいかんのだ」
博士はタロとライゾウにそう返した。
「わかるか、科学者にとって妥協や満足は敗北なのだ」
「で、どうするんですか?」
「知れたこと、わしはひらめいたのだ」
「犬や猫の御飯でですか?」
「今ドッグフードとキャットフードを買い置きしているな」
「ええ、他にも色々作ったり買ったりしてますけど」
「ガムなんかいいよな」
「おいらは煮干し」
「そんなもので満足していてはいかんのだ。もう犬や猫もしゃべる時代だ」
「って博士のミスからじゃないですか」
「ミスから思わぬことも起こるのじゃ」
原子力発電所の爆発ですら些細なミスとする博士である。本当にそんなことはいちいち気にはしていない。
「で、じゃ」
「犬や猫の御飯を作るんですか?」
「うむ、待っておれ」
博士はそう言うとやにわに立ち上がった。
「ちょと研究室に篭もる。タロとライゾウを頼んだぞ」
「まあいつものことですからね」
小田切君の返事はさらになおざりになっていた。
「どうぞ御自由に」
「冷たいな」
「そうでしょうか」
だが話はそれで終わりだった。博士は地下の研究室に篭もりいつもの怪しげな研究に入った。後には洗濯物を干し終え家計簿の計算をする小田切君とそれを手伝うタロとライゾウだけがいた。
「なあ小田切さん」
ライゾウが彼に横から声をかけてきた。
「博士、今度は何作るんだろうな」
「さてね」
そんなことはお構いなしといった態度で電卓で計算をしている。
「碌でもない、警察どころの話じゃないものだろうけれど」
「それってやばくない?」
タロがそれを聞いて顔を顰める。
「警察犬の知り合いに聞いたけどこの研究所かなりマークされてるよ」
「いや、そんなのわかってるし」
それでも小田切君の態度は変わらない。
「まあいつものことだから」
「そうなんだ」
「気にしない気にしない」
地下で何が何かわからない不気味な物音が聞こえても意に介してはいなかった。下で博士がどんな怪しい道具や生き物に囲まれていても。彼は気にしてはいなかった。
第六話 完
2006・8・1
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