第二十二話 大学その六
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「一切な」
「左様ですか」
「神もこの世の摂理も完全に否定するのなら別だが」
「そうでない限りは」
「自由に学ばせることだ、法皇庁はこれまで多くの学者を害してきた」
そして多くの粛清を行ってきた、異端ということにして法皇庁を批判した大学教授をその著作を目の前で焼いたうえで火刑に処したこともある。
「それにより多くの人材が失われてきた」
「法皇庁の邪魔になるから」
「それで、ですね」
「そうしたことをしてきた」
「ですがこの国では」
「それはさせない、妃には私が言う」
そして制御するというのだ。
「安心するのだ」
「わかりました、では」
「その様にお願いします」
「この度のことお任せします」
「太子に」
「ではな」
二人の言葉を受けてだ、太子は確かな声で答えてだった。
実際にマイラに直接話した、すると。
マイラは最初難しい顔になった、だが。
暫く経ってだ、夫である彼にこう答えたのだった。
「わかりました」
「ではな」
「大学での学問については」
「その様にな」
「はい、ですが」
「それでもか」
「そうした学問を学ばせて」
「いいのだ」
微笑んでだ、太子は答えた。
「それでもな」
「旧教の教えは」
「それは軸に置く」
太子も旧教の国から来ている、それでこう言ったのだ。
「その教義をだ」
「大学の教育のですね」
「軸に置く」
「神学は」
彼等がいる西方では学問は全て神学からはじまっていると言っていい、それこそ哲学も法学も文学もひいては音楽もだ。全て神学から派生している。
その学問という大樹の幹である神学、それはというのだ。
「旧教ですね」
「司教の推挙する者達、書をだ」
「大学に、ですか」
「入れよう」
法皇庁に近い者達ではなくだ、旧教であっても。
「そうしよう」
「それがいいですか」
「私はこう考えているが」
「では」
「妃はどう思うか」
マイラのその目を見て問うた。
「このことは」
「旦那様がそう言われるのなら」
太子の読み通りだった、ここでのマリーの返事は。
「それならば」
「いいな」
「はい」
太子の目を見たままこくりと頷いた。
「そうさせて頂きます」
「それではな」
「そして他の学問も」
「色々とだ」
「学ばせるのですか」
「そうだ、図書館にはだ」
そこにはというと。
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