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【IS】何もかも間違ってるかもしれないインフィニット・ストラトス
第百三三幕 「138億年越しのフォークロア」
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渡り、人界を守護する為に百邪や妖機人、或いは袂別った同胞と戦えり。
――その余りにも果てしなき戦いの末……多くの守護者が時代の流れに消えていった。
――吾はその生き残りの一かけら……本来宿っていた巨大な神体の一かけら。
――辛うじて存在を保っている真・五行器に宿りし最期の思念なり。
『うん、話が全然わかんない♪』
そしてこの笑顔である。
実際問題、麟王の話は重要な部分を端折りすぎて事前知識なしにはなんのこっちゃわけわからんストーリー構成になっている。これは鈴が悪いのではなくて麟王の説明が悪いのである。
しかして麟王からすれば分かってもらわねば困る訳で。
――なれば、見るがよい。
その瞬間、鈴の目の前に光り輝く球体が現れた。無意識にそれに手を伸ばした鈴は……ここにきてやっと自分の背負った荷の重みを実感することになる。
『こ、これは……っ!』
目まぐるしく移り変わり歴史、人、光景の津波。押し寄せる強い念の波動。血肉を抉られても尚使命の為に戦い続ける太古の、現代の、未来の戦士たち。そして戦士達は誰しもが巨大な存在と共にある。
其の名を『超機人』。太古の昔、鈴の遠い遠い先祖たちが
約束の地
(
ちきゅう
)
に住まう人々を守護するために築き上げた人造の神。人知を超えた神霊の顕現。
――これは記憶。
連綿
(
れんめん
)
と古から続く、魂の闘いの連鎖。
己が身を喰らいつくす狡猾な敵がいた。
大地を埋め尽くす異形の怪物もいた。
山脈を越えるような巨大な超機人もいた。
そして超機人は、常に人が人を護る意志と隣り合って存在していた。
それはまさしく、人類存亡を賭けた神話の記憶だった。
ISの出現がなんだとキャーキャー騒いでいる世界をひっくり返す、本物の激動だった。
『あ、アンタ一体いつから戦ってんのよ!?こ、こんな果てしなく……あんな化け物どもと!?』
――汝が垣間見たのは人の歳月に換算して百三十八億年ほど前の闘いの記憶。
――この宇宙が新生するより更に以前の、吾らの敵が押し寄せた『黙示録』の一部。
『ひゃくっ………す、スケールが違いすぎるわよそんなの……嘘だって言い張りたいのに、わかっちゃうの。あの映像もアンタの言葉も全部本物だってこと……』
パニック寸前の頭の中で、鈴の心は激しく揺れ動く。
鈴はあの太古の戦士たちのようにパッキリ割り切って人類存続をかけた戦いに飛び込めるほど肝が据わってはいない。いいや、むしろここで即決できるほうがどうかしているとさえ思う。自分の交わした契りの意味を鈴は理解してしまった。
それはつまり、鈴にはもう選択肢がないということだ。
生き残る為に逃げようとも、もう逃げ場がない程に大きな波なのだ。
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