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蒼き夢の果てに
第7章 聖戦
第155話 再召喚
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。何故ならばこの召喚はガリア王国としては絶対に失敗してはいけない召喚作業だから。
 確かにこの世界には湖の乙女……確実ではないが、向こうの世界の長門有希の転生体が居る。おそらく、彼女がある一定の期間、俺の再召喚は成功しないが、それ以降ならば可能。……と言う趣旨の発言をしていたと思う。
 しかし、例えその言葉を信用していたとしても、この鏡の間で行われる召喚作業は特別。更に、今のタバサの立場はおそらく、単なる未来の王太子妃などと言う立場でもなければ、復権されたオルレアン大公家当主と言う立場でもないと思う。

 オルレアンの乙女。もしくはラ・ピュセル。このハルケギニア世界にジャンヌ・ダルクの伝説がない以上、この異名はタバサの為に用意された異名となっているはず。

 折角、救国の乙女としての看板を背負わせたのに、ここで国民より将来の英雄王と称される俺の召喚を失敗させる訳には行かない。それも、王の御前で開かれる公開召喚の場で。
 その絶対に失敗出来ない召喚術の触媒としてなら、俺の魂魄と霊的に繋がっていた元肉体を使用するのは理に適っている。更に、ぱっと見た感じだけなのだが、この俺の元右腕は身体から切り離されてから既に二か月が過ぎているにしては余りにもみずみずし過ぎるように感じた。
 おそらくこの右腕は斬り落とされた直後から、俺の再召喚の際に触媒として使用する為に魔法により保存されて来たのだと思う。

 タバサに対してひとつ小さく首肯いた後、彼女の脇を抜け、其処から進むこと三歩。榊の木と注連縄によって作り出された聖域から脱出。出来るだけ余計な感情を発しないように、英雄王と呼ばれるのに相応しい風度を失わないよう鷹揚な雰囲気を維持しながら、ジョゼフの前で(ひざまず)き臣下の礼を取る俺。
 その瞬間、大きく翻った儀礼用のマントの内側に確かに存在する現在の右腕と、そして、左手に携えられたかつての右腕入りの木箱。
 その右斜め後方にて、俺に僅かに遅れ同じように跪くタバサ。

 ……成るほどね。こう言うのも夫唱婦随(ふしょうふずい)と言うべきなのだろうか。

「ただいま帰参いたしました」

 僅かな皮肉を胸に、先ずは臣下としての挨拶を口にする俺。
 しかし、更に続けて、

「ゲルマニアの魔導士の悪辣な罠により異世界に送られ、そのままでは朽ち果てるしかなかった私を救い出して頂き、感謝の言葉も有りません」

 相変わらず頭を垂れたままの姿勢で、もっともらしい嘘を平気で口にする俺。そもそも、俺が地球世界に追放されたのが二カ月以上前の話。しかし、今、この場に現われた俺の姿はガリアで儀礼の際に俺が身に付けて居たマントや白の詰襟に白のスラックスと言う、まるで海軍士官のような出で立ち。靴に至ってはこのハルケギニアではデフォの余り質の良くない革靴な
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