『Cherry blossoms』
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秋の日射しほんのり暖かく、乾いた風に揺れる桜の下に佇む。
もうすぐ散り終わる頃だと、少し切なくなる黄昏時。
此の場所で君と離れ、此の場所で、もう一度前を向く。
散り際こそ美しく在りたい。
そんな願いも虚しく、無惨にアスファルトでケガサレてく。
段々近付く灰色の重たい雨雲を見つけ、今日が最期だと悟った。
更に無惨な散り際となるに違いない。
雨足は強まる一方で、一晩中やむことはなかった。
明くる朝、桜の木を見に行った。
強くしなやかに凛々しく咲き誇っていた。
僕は自分の目を疑ったんだ。
間違いなく総て散り散りになっただろうと確信が在ったから。
目の前の現実は、僕の確信とは程遠かった。
奇跡だとしか言いようがない。
十月桜は強いのだろうか...。
それとも此の桜が必死でもっと生きたいと願ったのだろうか...。
何も出来ない僕は独り、日常に流され淘汰されてく。
君の記憶の中でさえ居なくなるだろう。
君と交わした沢山の言葉には、沢山の想いが在った。
其の想いは今、何処へ行ったのだろうか...
もう一度、此処から前を向く。
過去の僕に別れを告げた十月桜の下で。
今の僕と過去の僕が何ら変わりないなんて哀しい現実。
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