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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百三話 キフォイザー星域の会戦(その1)
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狡猾で強かで抜け目無い男だった。地位を利用してかなり私腹も肥やしただろう。貶しているのではない、褒めている。そのくらいの悪党でもなければ内務省という巨大官庁で次官など務まる筈が無い。
そんな父親から見てノルデン少将は不出来な息子らしい。三十代半ばで少将ならまずまずだとは言える。しかし彼は宇宙艦隊の正規艦隊に所属していない。その事が父親にとっては不満のようだ。
宇宙艦隊はミュッケンベルガー元帥が退役後、大幅な人の入れ替えがあった。主としてそれはヴァレンシュタインによって行なわれたものだが、新たに宇宙艦隊に配属された人間達は身分や縁故ではなく実力で選ばれた。そしてノルデン少将はその人選から漏れた……。ノルデン少将も彼の父親もその事に大いに不満を持っている。
ノルデン少将がこの内乱に参加したのはヴァレンシュタインに対する反発もあるが、この内乱で武勲を挙げ周囲に自分の実力を認めさせてから家督を継ぐ、そういう思いもあるようだ。父親を見返したいのかもしれない。
もっともこちらにとってはヴァレンシュタインが登用しなかったという一点で何処まで信頼して良いのかという不安を持たざるを得ない。もちろん登用されなかった人間にもグライフスのような頼りになる人間も居る。先入観は持つべきではないのだろう。しかし、ノルデンに対する不安は日ごとに募りつつある。今更だがブラウラー、ガームリヒに傍に居てくれればと思った。
「閣下」
私に声をかけてきたのはクラウス・フォン・ザッカートだった。古くからリッテンハイム侯爵家に仕える男で歳はもう七十に近い。にもかかわらず髪は黒々としている。不思議な男だ。
「何だ、ザッカート」
「あまり、考え込まぬ事です」
「表情が暗いか」
ザッカートは黙って頷いた。リッテンハイム侯爵家の軍はこの男が押さえている。軍では三十歳前後で少将まで進んだが、その後退役しリッテンハイム侯爵家の艦隊を預かってきた。この男が居る限り艦隊に不安は無い。軍を退役した理由は分からない。一度尋ねたが沈黙したままだった。何となく気圧される思いで、そのままにしている。
敵と接触したと哨戒部隊から報告があったのは五時間ほど経ってからだった。
「敵との交戦まで後どのくらいの時間がある?」
「両軍がこのまま進めば三時間後でしょうか」
「そうか……、一旦全軍を止めよう」
私の言葉にノルデンはちょっと驚いたような表情を見せた。
「厳しい戦いになるからな、二時間ほど休息を取らせよう。食事も許可する、但し飲酒は不可だ。戦場で酔われては戦えんからな」
「承知しました」
ノルデンが命令を下すためにオペレータのところへ行くのと入れ替わるようにラーゲル大将がやってきた。
「敵と接触したそうですが?」
黙って頷くと“そうですか、いよいよ
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