第12話『造られし者〜対峙した時代の光と影』?
[7/21]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
」
打ち合い敵わず、この宰相は情を理で跳ね返す。おおよそ分かっていた返事に、マスハスの中で何かが切れた。
「テナルディエ軍がアルサスを襲撃した時、騎士の一人も現れなかった!おぬしらの判断、『中心』の為に『末端』を切り捨てる行為こそ!王国と陛下に対する反逆だろう!?」
高級感漂う机が激しく揺れる。感情のあまり、マスハスは思わず机を叩いてしまったようだ。だが、ボードワンには、マスハスの気迫が声に乗って叩き付けられたように思えた。
自分はティグルの正当性を主張する為に、王都へ足を運んだはずだ。書状を渡す為に来ただけの、子どものお使いではない。
今の自分はティグルの代わりであり、自分の言葉はティグルの言葉であり、自分が聴き、見たことはティグルへ伝えなければならない。
「ボードワン。一人の流浪者が……王国に生きる民、アルサスを護った話は知っているか?」
「……?」
「その男は……シシオウ=ガイと名乗っている」
「シシオウ……ガイ」
独特の発音。その獅子王凱と同じ声帯を持つボードワンは、眉を潜めてそうつぶやいた。
「この国の者でないにも関わらず、アルサスにもがく民を護る為に力を振るった。真っ先に神殿を見捨てた神官に変わり、子どもたちに教えを説いてきた」
ティグルがキキーモラの館へ出立する前まで、記憶は蘇る。
それは太陽の光のように、戦乱で幸奪われた子供達の心を育み――
それは月の光のように、戦乱で傷ついた子供達の心を癒して――
何もしないまま空虚な時間が過ぎていく。それが我慢できなくて、悲しくて、憂いていて――
何かをしたい。凱はただ、本当に、それだけで、それしか思っていなくて――
「異端以外にどう判断せよと?」
「…………今、何と申した?」
「シシオウ=ガイなる者は異端と認定。本日公開処刑の予定」
躊躇なく告げる新たな現実に、マスハスの態度はさらに憤慨した。
「異端……異端じゃと!?まさか……ガヌロン公爵の手が!?」
そうとしか考えられない。異端認定はブリューヌ法王庁からしか発布できない。それが出来る人物はただ一人。
なんだ、これは――
一体何の茶番だ――
国の内政をくすぶる異端の歴史。
異端という不穏分子が、村を、領地を、そして国を倒壊させた事例には枚挙に暇がない。
だからこそ、ボードワンは叛逆よりも異端を警戒する。原則というものを信じないのは、異端からというボードワンの弁。
「彼の噂は、アルサスを侵攻したテナルディエ軍の敗残兵から聞き及んでおります。なんでも、『人を超越した力』を以てテナルディエ軍を瓦解敗走させたと」
結果として、傭兵として雇われたジスタート軍が戦の勝敗を決している。しかし、
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ