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魔弾の王と戦姫〜獅子と黒竜の輪廻曲〜
第12話『造られし者〜対峙した時代の光と影』?
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た――
『最強』と『最恐』の両輪が支えるブリューヌ。二つの概念がブリューヌを鋭利な形で発展……その歴史の刃を研いできた。
美しく研がれた刃。それを象徴するかのように、リュベロンの山肌に王宮はたたずむ。
馬車が進むにつれて、それは大きく凱の視界へ移る。でも……

――俺達は……何と戦うべきなのか……まだ何もわかっていないんだ――

悔しそうな声色で、凱はつぶやいた。分かっていないのは、自分自身も含まれている。そう、いまだに『不殺』の答えや『人を超越した力の意味』ですら見いだせていない。迷える子羊は輪廻の中を、箱庭で彷徨うしかないのだろうか?






『ブリューヌ・王都ニース王宮内・とある一室』





マスハス=ローダントは憤慨していた。
テナルディエの独断ともいえるアルサスへの焦土侵攻。王が貸し与えた土地を、臣民が土足で踏みにじる大貴族の行為に対して抗議する為、本来なら、非道を人道で正す為に貴族として取ったこの行動は正しいはずだ。
しかし、王宮へ足を踏み入れた時、いかなる理由で――散々送り付けた書状を握りつぶしたのか――を知ってしまった。
マスハスは自分と、目の前にいる親友の表情に問いかける。
この男、ピエール=ボードワンは考えにすぎるところがある。
国という天山頂に近い人物ほど、常に(ふもと)への気を配る必要がある。
時代の天候、それによる民衆と貴族の動向は千差万別だ。とくに山頂はそのような天候の変化が著しく変化する。
今日、川の水が高きから低きに流れているからと言って、明日も同じだとは限らない。
一夜で水が枯渇することだってある。
逆もしかり、大洪水で川を逆流させてしまうことだってある。
晴天だった青空が半刻も待たずして、急に大気の流れを加速させて、雷雲を呼ぶこともあるのだ。
そういった類経験を、ボードワンは『民政』『国政』『君政』から学ばされてきた。
故に、ボードワンは考えに考える。
ティグルヴルムド=ヴォルンは両公爵にとって代わる第三勢力となり、ブリューヌを台頭する要因となるではないのかと――
原則を信じないにしても、軌跡を信じないにしても、今のボードワンにすがれるものは「ブリューヌの存続を第一に」という至極真っ当な論理しかなかった。

長い沈黙を破って、マスハスは重々しく口を開く。

「おぬしら、『最恐』と『最強』の均衡状態が崩れるのを待つ気か?」

「ティグルヴルムド=ヴォルンはどう判断する?彼は己の領土を護る為にジスタート軍を雇った行動を!」

猫ひげの宰相へ真っ向からマスハスは切り結んだ。
ティグルの正当性を貫くために。何より、エレオノーラと同じように「民を護る為に」という意思を大事にしたいという気持ちが強かった。

「叛逆以外にどう判断せよと?
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