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魔弾の王と戦姫〜獅子と黒竜の輪廻曲〜
第12話『造られし者〜対峙した時代の光と影』?
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爵から彼の……いや、彼らの素性をある程度耳にしたからだ。

――ルテティア現領主にして、ブリューヌ法王庁の宰相。マクシミリアン=ベンヌッサ=ガヌロン。――

臣民や領民、純順な老若男女においては、好々爺と器量の広さで名君主と評されている。歴代ルテティア領主でも、ここまで人望をかき集めることのできる領主はいないとされ、「過去現在において比肩する者なし、未来永劫、彼を超越せし者なし」とまで言われている。
しかし、反逆と異端に対して、慈悲と容赦が微塵もない。
凱はオージェ子爵の言葉を思い出す。

――ガヌロン公爵の二つ名。煉獄勇者(イーンフェルヌス)とも呼ばれている。―

――……勇者……ですか?オージェ子爵――

――ガイ殿。彼は牙をむいた者に対する烙印……処刑法には特徴がある。――

――特徴?――

異端の処刑法は大体、凱でも知っているつもりだ。火刑、磔刑、異端拷問椅子、様々だ。別に特徴というわけでもなさそうだが。

――相手の頭を右手でつかみ、まるで烙印を刻むかのように……こう……柘榴(ザクロ)のようにカチわって潰すらしい――

――う……――

人当たりのよさそうな顔、オージェ子爵が冷や汗をかく。それは、凱も同様だった。
結局、脱出の機会をうかがう、凱の望む「いざこざ」は起きることなく、ニースへ到着した。





『ブリューヌ・王都ニース内・中央街道』





誰かが歌っている。惰声のつもりでも、ブリューヌ人は歌唱力が無駄に高い。ガタンという木製の音を弾ませて、車輪と荷馬車がきしむ音が聞こえる。何度も続く揺れの中、凱はあまり眠ることが出来なかった。くまが薄っすら浮かんでいる。

――今日の昼寝は今日しかできない。明日の昼寝は、明日でないとできない――

そんな野○の○太の正義を称えるような陽気な歌は、今の凱にとって耳にささやくものでしかない。
歌詞にあるように、凱の明日は果たして訪れるだろうか?答えは皆無だ。
偽りの平和。内乱がくすぶる中の希望に対して、人々はどうするのだろうと凱は訝った。
馬車は王都へ続く幹線通路を堂々と闊歩する。民である歩行者は慌ててモーゼの海割りのごとく道を開けていく。
異端審問の順列は、概ねこの通りである。
まず、異端の容疑者を異端審問所へ送り届ける。政治システムを揺るがす危険要素を、まずは王都にて暴き出すのだ。
王への説明と報告を必要とするために。
それが終わった後、ブリューヌ建国前よりアルテシウムの司祭の肩書をもつガヌロンが、異端者を裁定するのだ。
テナルディエ公爵家は、『誰よりも強くあれ』という信念をブリューヌの『歴史』として切り開き――
ガヌロン公爵家は、『誰よりも恐れあれ』という理念をブリューヌの『伝統』として守り抜いてき
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