第12話『造られし者〜対峙した時代の光と影』?
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ない。凱にまとわりつく親しい人間達は、異端の糸でからめとれる。
――我が子を奪われた獅子が、子を取り戻す為に怒り狂うことと同じように――
――人間から嫌われることを、何よりも、人間から怪物と思われることを怖がっているなら、手の打ちようがある――
卓越した頭脳の持ち主であるガヌロンの思惑を察したグレアストは、その後の展開を予測して口元を釣り上げる。
「いぶり出す。といったところですかな」
見えない『糸』をやっと手繰りあて、読めない『意図』を見抜いたグレアストは、僅かながらに歓喜を得る。
異端審問にかける。確かな正義と君主制の織りなす時代だからこそできる不震の執行権。
そして、ガヌロンは小さくつぶやいた。
――私は……『私』を放っておくことはしないのだ――
その意味深いガヌロンの言葉は、グレアストの耳に届いていなかった。
◇◇◇◇◇
……グレアストは、そんな事を思い返していた。
あまり街道の整備が整っていないアルサスを通る為、馬車では当然不規則に揺れる。
そんな揺れに対する苛立ちをごまかすかのように、獅子王凱は仮眠をとっていた。
獅子王凱。その青年は今、異端の烙印である手枷をかけられている。
気持ちよく寝つけるかと思いきや、車内の片隅にある拡声設備(スピーカ―)から、男の声が発せられる。
《ご機嫌如何かな?シシオウ=ガイ》
「……カロン=アンティクル=グレアスト」
ゆっくりと目を開けて、凱は問い返す。その声色はどこか不機嫌成分が含まれていた。
《獅子は寝起きが宜しくないようですな》
「察しろ。たたき起こされたのだ」
シーグフリードと同じ銀髪の男。人の気も知らないのか、ひょうひょうとした口調でグレアストは凱に語り掛ける。
たたき起こされたという表現は、こういうことだ「馬車のはずみで頭をぶつけた」という事で。
《王都へたどり着けば、気も晴れることだろう。ガヌロン公爵も御待ちかねだ》
ブリューヌの大貴族の名を聞いたとき、凱の背筋に悪寒が走った。
気が晴れる。それはある意味間違いではないかもしれない。
異端審問のオチは、流石の凱も理解できる。結末としてはアルサスにもう帰れない。ティッタとも、もう会えないのだ。
その事実が、凱の心の檻をより一層締め付ける。
「ガヌロン……この異端審問状を差し出した奴か」
《敬称くらいつけたらどうだ?無礼な流浪者だな》
「かまわないじゃないか。命のやり取りをする奴に、礼儀作法なんて必要なんて……」
目の前の現実を理解しているから、凱の返事も容赦がない。至極真っ当なことであるため、グレアストはこの辺で会話を打ち切った。
凱の声色が弱々しくなる。それは、オージェ子
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