第12話『造られし者〜対峙した時代の光と影』?
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、知りすぎたと思われてはならない。
そういったものを、異端という手段で闇に葬る処刑法を考案したグレアストだからこそ、誰よりも『知りすぎることに対する』危険性を理解している。
「ふっふふふふふ!!ついに捕えたぞ!獅子王の忘れ形見!」
人ならざる者のような、年老いた彼の口元が極端に吊り上がる。主従関係こそ長いグレアストとて、ここまで歓喜に打ち震える主の表情を見るのは初めてだった。
10数えるくらいか、再びガヌロンが沈黙を破って口を開く。
「閣下。どうやらあの男は宣教師からぬことをしているようです」
宣教師。それは、特定の思想や宗教を未開の地へ伝播する為に、故郷を離れて布教活動する人物の事である。
目的は単に『伝える』だけではない。居合わせた地域に対しての教育水準等の向上活動に取り組むことが、行動理念の常といわれている。
遣われし者という意味も込められており、その神聖な行いは報いを求めてはならないとされている。
ガヌロンは、ほくそ笑む。
独立交易都市のような他宗教都市群ならまだしも、王制から脱皮できない虫どもの集まりで、よくもまぁ、尻のかゆくなりそうなお節介が焼けるものだと。
そもそもジスタートやブリューヌでは、独立交易都市と信仰している対象が違うではないか。
ガイは知らない。ゆえに知るべきだ。幼稚な時代であるブリューヌに今必要なのは、『異端』ではなく『正統』なのだと。
いや、知っていながら、こうなることが分かっていたからこそ、覚悟を決めていたのではないか?
特に、独立交易都市において『王』、『神』、『獣』は忌語のはずだ。凱はその事実を知っていたはず。
(そうまでして、この時代が愛しいか)
ともかく……
詳細がどうであれ、ガヌロンに一つ、気まぐれに近い名案が浮かんだ。それをグレアストに告げると、両者は暗い笑みを浮かべた。
「異端審問……ですか」
「そうだ。奴を異端の網でからめとってしまう」
網を行使するのは分かったが、半ば強引的であるガヌロンの網……つまり『糸』は読めても本心、『意図』までは読めない。
「ですが、素直に捕まるとは思えませんが……「それはない」何故です?」
この醜悪な老人には確信があった。
まともに捕縛しようとしても、超人的戦闘力を持つ凱が相手ではまず不可能だ。最初にグレアストが「バケモノ」と言ったではないか。
力に力で対抗する術は通用する見込みなど皆無だ。
とはいえ、所詮は勇者もまた獅子王。心強き、そして、心優しい故に、心正しき選択しか取れない。
例え自分が傷つくことを厭わずとも、他人が傷つくことは、何事にも耐えがたいはずだ。
それに、異端なら凱を庇い建てでき
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