第12話『造られし者〜対峙した時代の光と影』?
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ヌロン軍に期待されていたはずだった――
心躍るような出来事を裏切る形で、黄金の騎士は唐突に出現した。
獅子のたてがみのように長い髪を、その黄金の部位を、深緑の短剣をひるがえし、蹂躙の限りを尽くしていった。
顛末を話し終えたグレアストは、この鳥の骨の人物の反応を伺っている。
(さて、公爵閣下はどのような感想を……)
そんなグレアストのささやかな興奮は、徐々に高鳴っていく。
「ほう。それはすごいな。一人でテナルディエ軍を跳ね返したのか。弱者で溢れるブリューヌにまだ獅子がいるとは」
この得体の知れない主の関心を感じ取ったグレアストは、静かに笑みを浮かべる。
「その男、一体どのような持ち主なのかね?」
グレアストは斥候の報告をさらに思い出していた。顎に手を当てながら、何やら楽しそうに言葉を紡いでいく。
「何しろ、不可思議な力を秘めた青年でしてね。あの強さはバケモノでしたよ。こう左手に紋章のような刻印が浮かび上がると、緑色に輝いて……」
次の瞬間、グレアストは、己の報告に後悔することとなる。
パリン!!
瞬間、ガヌロンは好物の林檎酒入りのグラスを握りつぶした!
「……刻印だと!?」
さらに半瞬、ガヌロンの態度が豹変する!穏やかだったガヌロンの声色がドス黒い音圧となって、グレアストの耳朶を討つ!
(これが……閣下の本当の声色なのか?)
ごくりと、この銀髪の男は恐怖のあまり唾を呑む。
「グレアスト。その紋章はこのような形をしていなかったか?」
骨のような小指でグレアストの視界上に文字をなぞる。それは「G」という独特な文字であった。
ブリューヌ語でもない、ジスタート語でもないこの文字をどうして知りたいか、グレアストには分からない。ただ、それはどうでもよかった。
些細な質問。グレアストにガヌロンの意図が理解できようが、理解できまいようが、目前の主の問いに返答しなければ己命がない。
「そのように見えなくもないですが……」
グレアストは震える声を抑えながら、のどを絞り出して答える。
人の持つ天譜の才の一つ、『神算』の持ち主であるグレアストとて、現段階ではおぼろげな答えしか持ち合わせていない。そもそも、そのような『音素文字―アルファベット文字』を見た事すらない。
だが、ガヌロンにとって、グレアストらしからぬ頼りない回答で満足した。なぜなら、この世界の『真実』を知るものは少なくてよいからだ。
通常、知りすぎてはならないものがある。権力が上に上にと集中する王制、特に謀略渦巻くブリューヌで長生きするには、常に注意深くあらねばならない。それも人並み外れて注意深くある必要がある。知りすぎてはならない。少なくとも
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