17. 旗艦は電 〜赤城〜
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プレートメイルを脱いだロドニーさんが夕食を乗せたお盆を盛って私のテーブルに来た時、私はちょうど4つ目のお櫃を空っぽにして5つ目のお櫃からご飯をよそい始めていた。
「アカギ。夕食を共にしたいが、よろしいか?」
「……どうぞ」
ロドニーさんは私の返答を受け、悪びれることもなく『では失礼する』と私の向かいの席に座り、鳳翔さんのお味噌汁に口をつけた。口をつけた途端ほっと一息ついているところを見ると、お味噌汁はロドニーさんの口にも合っているようだ。
「……うまい」
「そうですか」
「日本に来て初めて食事をうまいと感じた……」
「……」
執務室でのロドニーさんしか知らない私から見ると、表情筋を緩めておだやかな表情でお味噌汁を堪能する今のロドニーさんは違和感しかない。
「この、魚のグリルもうまい」
「サンマといいます」
「サンマというのか……この白い物体にソイソースをかけてサンマに乗せて食べるとさらにうまい」
「それは大根という野菜をすりおろしたものです」
「名は?」
「大根おろしといいます。そのままですが……」
「なるほど。共に食べると実にさっぱりとして食べやすい。フィッシュ・アンド・チップスとはまた違った趣だな……」
海外艦のロドニーさんが器用に箸を使い、ご飯とお味噌汁とサンマを堪能している姿にも違和感しかないが……彼女が戦艦時代に戦ったビスマルクさんをはじめとした、他の国のみんなはどうなんだろう?
昨日、ロドニーさんがこの鎮守府に来て、あの中将からのふざけきった命令を私達に伝えてきた。残酷な作戦内容を口に出すのをためらった提督に代わって、ロドニーさんが最終目標の集積地さんの名を電さんに告げた際、電さんは大きく取り乱し、ロドニーさんに食って掛かっていた。
『敵じゃないのです! 集積地さんは敵じゃなくて電の友達なのです!!』
電さんは涙を流しながらロドニーさんに小さな拳を何度も叩きつけていたが……ロドニーさんはそんな電さんを止めはせず、ただひたすらに彼女の非力な拳をその身体で受け止めていた。
『イヤなのです! 集積地さんと戦いたくないのです!!』
『……』
『行かないのです!! 行きたくないのです!! 電は行きたくないのです!!!』
そうしてしばらくの間、電さんはロドニーさんの身体を殴り続けた。電さんの息が上がり次第に殴り疲れて拳に力が入らなくなってきた頃、ロドニーさんは、電さんの右拳を左手で受け止め左手の手首を右手でつかみ、電さんを制した。
『……気は済んだか』
『うう……』
『気が済んだのなら、自分の本分を思い出せ』
『……ひぐっ』
『貴公は何者だ?』
『ひぐっ……駆逐艦、電です』
『ああそうだ。貴公は艦娘だ。では艦娘の本分は何だ』
『……』
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