17. 旗艦は電 〜赤城〜
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たくない。心を通わせた子鬼さんを殺したくない。子鬼さんに仲間殺しをさせたくない。……そして、子鬼さんとの出会いのキッカケを作ってくれた電さん。その電さんの行為を、私は否定したくない。
「……司令官」
「ん?」
「旗艦は誰がやる?」
提督にロドニーさんが言い寄っていた。全員の士気が低く、ロドニーさん以外の誰もが戦いたくない中での旗艦……きっと誰もやりたがらない……私もやりたくない。仲間殺しの命令など、誰もやりたくないに決まってる。
となると、消去法で旗艦はロドニーさんとなるが……部外者で敵に対して容赦のない彼女が旗艦となれば……作戦行動中の艦隊の瓦解は、もはや必然となるだろう。
「……もし誰もやりたくないというのなら、私が旗艦を勤めても構わんが……」
「いや、旗艦は決まってるよ?」
「……ほぉ。誰だ?」
意外なほどすんなりとそう答えた司令官は席から立ち上がり、呆然としている電さんの元まで近づくと……
「……電」
「は、はいなのです?」
「旗艦、頼むよ?」
そう言って電さんをまっすぐに見据えた。私はその時、提督と電さんの異変に気づいた。
「バカなッ!! メンタルヘルスが最悪の状態のイナズマを旗艦にするのか!?」
「そうよ? それともお前さん、旗艦になりたかったの?」
「そうではない! そうではないが……」
「なら命令には従ってちょうだいね」
友の殺害という最悪の作戦を前にし皆の士気が最低まで落ち込んでいるこの状況下で、提督だけが、まだその眼差しに希望の輝きを宿していた。
「電……お前さんが今回の作戦の……俺たちの切り札だ」
「……」
「信じてるよ?」
「信じてるって……でも、じゃあどうすればいいのです? 電わからないのです……」
「いつものように……思った通りにすればいいの」
「……」
「頼んだよ?」
そして提督が胸に抱く希望が具体的に何なのかさっぱり分からないが……電さんはそれをキチンと受け止めたらしい。私たちと同じく濁りきっていたその眼差しには、いつの間にか輝きと気力が戻っていた。
「はいなのです」
そうして次の日、最悪の作戦が幕を開けた。
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