17. 旗艦は電 〜赤城〜
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。なにか思うところがあるのだろうか……
球磨さんや鳳翔さんと話をしている電さんの元に、提督が歩み寄った。そばまで来た提督は片膝を付き、電さんの左肩に右手を置いて、いつものように柔らかい……だけどいつもと違って覇気のある声で話しかけていた。
「電」
「司令官さん、ご心配をおかけしてごめんなさいなのです」
「……大丈夫?」
「はいなのです」
「……よし」
電さんの返事を聞いた後、立ち上がって自身の席に戻っていく提督の左手は、力強く握りしめられていた。憤りを我慢するために拳を握りしめているのとは少し違う……。
「それではみなさん、これを……」
提督が自分の席に戻ったところで、大淀さんがホッチキスで止められた数枚の資料を私たちに配ってくれた。
「ん? なんだこれ……出撃命令?」
天龍さんが書類の一枚目を見て訝しげな表情をする。作戦名が『敵資材集積地強襲作戦』というそのままストレートなものだから、天龍さんが訝しがるのも分かる。
「……おい」
「はい?」
「これ、上からのお達しか?」
「そうよ?」
天龍さんは早速噛み付いていた。球磨さんは球磨さんで、ペラペラと一通り資料に目を通した後、ポイと投げ捨て不快な感情を顔に出していた。アホ毛がピクピクと波打っている。
「提督、球磨は降りるクマ」
「……そう言わずにさ。命令だから従ってちょうだいよ」
「却下だクマ。球磨は今まで通り出撃ボイコットするクマ」
「そういうわけにはいかんのよ」
苦笑いを浮かべる提督に対しジト目を向けた球磨さんは、提督を指差して冷静にこう言い放った。
「提督、なら聞くクマ」
「うん」
「球磨たちに集積地と子鬼たちを殺させたいクマ?」
「……」
室内の温度が若干下がった。提督の眼差しは変わらないが、眉間に少しシワが寄っているのが分かった。
「この質問には慎重に答えるクマよ? 球磨と提督の身の振りがそれで決まるクマ」
「“そうだよ”って言ったら?」
「提督をぶん殴った後、白旗持って集積地のとこに行くクマ」
「場所知ってるの?」
「そんなこと置いてく提督には関係ないクマ」
静かにそう言い放つ球磨さんの言葉にはよどみや迷いがない。恐らく提督が『そうだよ』と言ったその瞬間に提督を殴り飛ばし、その足で深海棲艦の元に走るだろう。
「……そんなわけないでしょうが」
眉間の皺を伸ばさないまま、提督がため息混じりにそうつぶやいた。悩みに悩み抜いて出撃命令を呑んだ提督の苦悩が感じられたが、まだ球磨さんは納得がいかないようだった。
「だったらなんでこの作戦をボイコットしないクマ?」
「……」
「今までの提督だったら、こんなクソたわけた命令『別に出なくていいんじゃない?
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