17. 旗艦は電 〜赤城〜
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い。敵だった集積地さんにあそこまで献身的に接し、彼女の心を開いてしまうほどに優しい。それは電さんの美点だ。
だが、それが戦場でいかに危うい行為なのかは考えなくても分かる。とどめを刺さなかった敵が、こちらに再び砲塔を向けてこないとは限らない。その時命を落とすのは、我々であり電さん本人だ。
もしあの時……電さんが集積地さんを助けた時、集積地さんが電さんに死にもの狂いで攻撃を行っていたら……電さんの助け舟を『反撃の好機』と受け取ってしまっていたら……そう考えると、私にはロドニーさんの考え方も全面的に否定は出来なかった。
「ロドニーさん」
「ん?」
「あなたの気持ちはわかります」
「ならイナズマをなんとかしろ。あれでは明日の作戦で沈む」
だが、それでも私は納得がいかない。
「あなた、大切な人はいますか?」
「?」
「背中を預けられる戦友……共に笑う友達……心から愛した人……そういった人は、あなたにはいますか?」
「……女王陛下の元に姉がいる」
「もし、あなたがお姉さんを撃たねばならなくなった時、あなたは平然とその砲をお姉さんに向けることが出来ますか?」
「……何が言いたい」
「もしためらいなく出来るというのなら、この話は終わりです」
しばらく考えたロドニーさんは、静かにお味噌汁を口にして飲み干すと、お椀を静かにテーブルに置き、私をまっすぐに見据え、こう言った。
「それが女王陛下からのご命令であれば、私は姉を撃たざるを得まい」
「……」
「そして、私がためらうことで他の仲間の命が危険にさらされるのであれば、私は姉をためらいなく撃つだろう」
……なるほど。ためらいはしないものの、彼女のその敵への容赦のなさは、出発点は電さんと同じく優しさのようだ。その優しさが、電さんとは違って敵に向くことはないだけで。
「……ロドニーさん」
「なんだ?」
「電さんは……」
私達は食事を終え、お新香をつまみながらお茶を飲んで会話をしていた。今までロドニーさんとは、まるで戦闘中のような苛烈な空気の中でしか言葉を交わしたことはなく、今のように落ち着いた状況で彼女と会話ができていることがとても不思議だ。
『あー……あー……全員、執務室に集まって』
静かな空気を提督の放送が打ち破った。明日の作戦に関する説明が始まるのか……
「ロドニーさん。話の続きはまた後ほど」
「分かった。食えない男の顔を拝んでからだな」
ロドニーさん流のジョークを聞き流し、私は彼女とともに食堂を出て執務室へと急いだ。……二人で並んで気付いたのだが、彼女はプレートメイルを着込んでいる時と比べると、身体が若干小さい気がする。プレートメイルがなくて威圧感が鳴りを潜めているためか……意外なほど身体が細く、小さ
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