肆ノ巻
御霊
3
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ひとが本当にあたしのこと好きなのか、そうじゃないかぐらいはわかるのよ!あんたはわからないの?悠!それにもっと大事なことがあるでしょう。あんたは亦柾に、ちゃんと、自分の気持ち伝えたの?まずはそこからでしょう?他人に嫉妬するのも、呪うのも、あとのことはそれから考えればいーの!わかった?わかったらいくわよ!」
「自分の…気持ち?」
悠はまるで思ってもいなかったことを言われたかのようにポカンとした。そんな悠の腕を掴んであたしはぐいと引く。
「高彬も!何二人ともおんなじ顔して。善は急げ、サッサと行くわよ!」
「瑠螺蔚、さん…?行くって、ええと、どこへ…?」
「え?なんでこの話の流れでわからないかなー。決まってるじゃない。徳川家よ!」
「ええっ!?」
「い、行ったところで、わたしには、体が無い…!」
徳川家に行くと言った途端に悠が急にマゴマゴし始めた。その姿は恋する乙女そのもので微笑ましいが、相手は霊体。確かに、亦柾に会ったところで亦柾に悠が見えるかも分からない。
「ああ、体?体があるかないかの問題?体があったらあんたは亦柾に好きって言うの?」
「体がないもの…」
「だから、あったら言うの?ちゃんと」
悠は一瞬怯んだ。でも、死人に体が戻ってくることなどあり得ないとわかりきっているかのように諦めたように頷いた。
「…いいわ」
ふん、言ったわね!言質はとったわよ!
「じゃあ、あたしの体、つかって良いわよ」
「瑠螺蔚さん!」
あたしは何でも無いことのようにへろりと言った。高彬の焦り声が矢のように飛ぶ。ぴたりと動きを止め、ゆっくりと顔を上げた悠の瞳が、きらりと光った。
そこからの記憶は、無い。
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