それぞれの夜
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、もう存在しない敵に対して自身の拳と爪を振るい続けている。
それに嗤いながら近づく一人の男がいた。ドラコとジェムの戦いを見て正面からの戦いを挑むのは不利だと判断した男は、まず影分身で何度か攻撃をしかけた後……ドラコに相手に瞳に同じ映像をループさせ続ける催眠術をかけた。ドラコの精神が擦り切れるまで。
「さて、ではこの子には……あの子の前に私の傀儡になってもらうか。もう一仕事頼むぞ、カラマネロ」
「う、ぐ……」
カラマネロが改めてドラコに改めて催眠術をかける。今度は映像ではなく、自分たちに服従を強制する……洗脳の術を。ドラコがうめき声をあげるが、もはや抵抗のすべはない。
だが、そんな男に声をかける一人の少女がいた。
「……相変わらず、趣味が悪いのですね。アマノ」
男――アマノやドラコよりは背の低い、薄いピンク色の髪をツインテールにした少女が、アマノに苦笑する。茶色のぼろぼろマントを被った彼女にアマノも振り返り、にやりと笑みを浮かべた。
「やっと来たか。ずいぶん時間がかかったな」
「まあその代り上手くやってきましたよ。……チャンピオンはしばらくここには来れません」
「ご苦労。……もう一つ頼まれてくれるか?」
「なんです?」
アマノは少女に一枚の写真を渡す。そこにはドラコとバトルするジェムの姿が写っていた。
「この子はチャンピオンの娘だ。……今日は俺がこいつを手に入れるはずだったんだが、失敗してしまってな。俺が再び近づけば、警戒されるだろう」
「今みたいに影分身と催眠術でやっちゃえばいいんじゃないです?」
「無理だ。こいつは今あの野郎の息子と共に行動している。この術は一人にしかかけられない」
「まさに目の上のたん瘤ですね。……いいですよ、私がやります。なかなか私好みの子ですし」
少女は写真を見て笑った。写真の中のジェムを見るその瞳は、彼女を人間として見ていないのがアマノにはわかった。まるで、美しい美術品を見るような眼だ。
「……趣味の悪さは俺に似たんじゃないか?」
「中年のロリコン趣味と一緒にされたくはないのです。それではわたしはこれで」
ドラコのことなど眼もくれず、夜のバトルフロンティアを歩いていく。残されたアマノはため息をついた。
「まったく、誰がロリコンだ。……まあいい、私も今夜は『楽しむ』とするか」
催眠術をかけ終わり、崩れ落ちたドラコを見て満足げな笑みを浮かべる。そうして、それぞれの夜は更けていく――。
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