それぞれの夜
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せっかく同じ部屋で過ごすんだし、少しお話ししない?」
「……話?」
怪訝そうな顔をするダイバ。フードから覗く目は冷たく、一瞬彼とバトルした時のことを思い出しすくみそうになるがこらえる。
「そう。私、あなたがどうしてそんなに強くなったのか……あなたの話、聞いてみたいな」
「……聞いても、つまらないよ」
「そんなことないわ。あなたのお父様もお母様も、その、変わった人なんだし、興味があるの」
「いやだ、教えない」
ジェムが聞いてみたが、ダイバは珍しくぴしゃりと断った。その言葉には、はっきりとした拒絶が見て取れた。
「思い出したくないの?」
「っ……そんなこと」
「やっぱり、そうなんだ」
彼は図星を差されたように顔を背ける。その仕草は年相応の子供の様で、ほんの少し微笑ましく……そして、痛ましかった。ジェムにとっては父と母との思い出は全て宝物のような記憶だ。思い出したくない記憶というものがどんなものか、想像も出来ない。
「ねえ……あなたはお父様やお母様に、抱きしめられたことある?」
「は?……ないよ、そんなの」
「私のお母様とお父様はね。昔から、私が良いことをした時、悪いことをして叱った後……よくぎゅって、抱きしめてくれたの」
「……だからなに?」
「そうされると、なんだか大切にしてもらえてる気がして、とっても嬉しくなるのよ。……こんなふうに」
ジェムは隣にいるダイバの自分より小さな体をぎゅっと抱きしめる。お風呂あがりの体のぬくもりが、服越しにダイバに伝わった。
「あったかくて、気持ちいいでしょう?この温かさを、少なくともあなたのお母様はちゃんと伝えたかった。そう思うの」
「……何を勝手なこと言ってるのさ。僕のママはパパの従順な道具だ。パパが僕にかける期待を叶えるために僕に構ってるだけ……それだけだよ。君がどんな風に育ったか知らないけれど、君の勝手なイメージを押し付けないでくれない?」
「ううん。間違いないわ。だって、あなたのお母様は、私、に…………」
「……?」
ジェムの言葉は途切れる。ダイバが首を傾げてジェムの顔を覗き込むと、彼女はすやすやと寝息を立てていた。お風呂に入る前から相当眠たそうにしていたとはいえ、こんなタイミングで眠らないでほしいとダイバは思う。蹴り飛ばしてやろうかと思った。
「まあ起きて話を続きをされてもうっとおしいし……いいか。ほんと、弱いくせに無防備だよね」
ダイバはため息をつく。今抱きしめたまま眠ってしまうこともそうだし、脱衣所の部分はガラス張りになっているので彼女が服を脱いでいるところは普通に見えていたわけだが、彼女は眠気のせいだろうか気にするそぶりを見せなかった。
「あんな油断した
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