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フロンティアを駆け抜けて
それぞれの夜
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―つまりはトレーナーの精神力を消費して発動する。それを一戦あたり2分もかからないあの施設で行い続けたのだ。並のトレーナーなら疲労で倒れてもおかしくないところだ。
目をこすりながらジェムは脱衣所へ。そしておもむろに服を脱ぎ風呂へと入っていった。

 体を洗い、シャワーで流した後浴槽に浸かる。手でお湯を掬いながら考えるのはまず今日のバトルのこと。

「ここに来てからいきなり色々あったけど……最後に少しだけ、お父様に近づけたかな」

 いろんな人とバトルして負けてしまいには操られて心が折れかけて、それでもあのドラゴン使いの少女のおかげでようやく掴んだ一つ目のシンボル。それを思い返す。

「今日あったこと、全部話したらお母様心配するよね」

 特に謎の男に操られかけたことを言ったら大層不安に思われるだろう。このことは伏せておこうと心に決める。両親のことに思いを馳せたあと、ダイバの母親であるネフィリムに言われたことを思い出した。ダイバと、仲良くしてあげてほしいと。

(凄く無茶苦茶する子だし、凄く暗そうだからあまりしゃべる気にならなかったけど……少し、話でもしてみようかな)

 今日自分の心を一度折った原因の半分くらいは彼のせいである。そんな子に自分から関わるなどやめておいた方がいいのではないか。

「でも私は……お父様の娘だもの」

 自分の父親は他人に対して頑なでひねくれていた少女の心を少しずつ開き、自分の命を絶とうとしていた一人の少年をバトルで笑顔にすることで留めたという。ならきっと、ダイバの心をネフィリムの代わりに開くことが自分のなすべきことなのではないか。ジェムはそう思った。



「ふう、気持ちよかった〜」

 お風呂から上がったジェムはパジャマに着替えて脱衣所から出る。ダイバの様子を見ると、彼はベッドの上で何やら携帯ゲームを遊んでいるようだった。ジェムが隣に座ってのぞき込むと、それはポケモンバトルのシュミレーションゲームらしい。

「へえ……ゲームするのね。面白い?」
「……別に。ただ、これもバトルの練習にはなるからね」

 そう言いながら彼は画面の中の自分のポケモン――ガブリアスとガルーラ、そしてゲンガーで相手を次々と倒していく。ジェムはあまり電源ゲームをしたことがないが彼の正確無比な動きは施設で見せたバトルと同じで相手に一切の容赦なく、効率的に倒している印象を受けた。
本人の言う通り、楽しんでプレイしているようには見えない。

「ガブリアスとガルーラは見たけど、ゲンガーって持ってたっけ?」
「……まあね。今日は使ってないけど」
「そうなんだ。今度見てみたいわ」

 なんて他愛のない話を少しした後、ジェムは意を決して聞く。

「ねえ。
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