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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百二話 別働隊指揮官 コルネリアス・ルッツ
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となると正面からの艦隊決戦になるな」
ロイエンタール、ミッターマイヤーが口々に意見を述べた。正面からの艦隊決戦、その言葉に会議室の緊張感が高まった。

ガルミッシュ要塞はレンテンベルク要塞同様多数の偵察衛星や浮遊レーダー類の管制センター、超光速通信センター、通信妨害システムが充実している。こちらがリッテンハイム侯達に近付けば当然だがガルミッシュ要塞にも近づく事になる。

要塞に艦隊戦力は無いから挟撃される心配は無い。しかし我々の情報をリッテンハイム侯に送るだろう。つまり敵は十分な備えをして我々を待つ事になる。楽な戦いにはならないだろう。

「他に意見は無いか? これは軍議だ、遠慮はいらん。どんな些細な事でも構わない、言ってくれ」
「……」

誰も何も言わない。つまり皆決戦こそが取るべき手段と思っていると言う事か。俺と同意見だ、早期に敵を撃破し辺境星域を平定する。そのためには多少不利でも、敵が要塞に合流する前に戦うしかない。

内心ほっとした、そして同時に恥ずかしくなった。此処に居るのは帝国でも能力を認められて宇宙艦隊に配属された男達なのだ。馬鹿げた作戦案など出す訳が無い、一体何を心配しているのか……。

「敵が要塞に合流する前に撃破する。私も同意見だ。この一戦に辺境星域の支配権を賭けよう」
俺の言葉に皆が頷いた。第一関門を突破だ、これからもう一つの関門をクリアしなければならない。

「この場で布陣も決めておこう。中央に私が、左翼はロイエンタール、ミッターマイヤー提督、右翼はワーレン、ミュラー提督に御願いする。シュタインメッツ少将は予備として後方にいて欲しい」

会議室にざわめきが起きた。
「閣下、我々を予備にとはどういう意味でしょう」
問いかけてきたのはカルナップ少将だった。不満なのだろう、立ち上がっている。

「不満か、カルナップ少将」
「今回の戦い、早期撃破を目指すのであれば予備などおかず、全力で敵に向かうべきでは有りませんか」

「それは違う、予備は必要だ。予備無しでは戦局が急変したとき迅速で効果的な対応が取れなくなる」
「……」

ワーレンの言葉にカルナップが口惜しげに顔を歪めた。反論しないのはワーレンの意見が正しいと分かっているからだ。ただ感情面で納得がいかないのだろう、何故自分達が予備なのか、信頼されていないのか、もしかすると自分達は使われずに会戦は終わるのではないか……。他の分艦隊司令官達も必ずしも納得した表情ではない。

「カルナップ少将」
「はっ」
「私は卿らの能力に対して不安など感じてはいない。ローエングラム伯は何よりも無能を嫌った。その伯に抜擢されたのだ、問題は無いだろう」
「……」

「私が卿らに不安を感じるとすれば、それは卿らが功を焦らないかということだ」

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