暁 〜小説投稿サイト〜
銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百二話 別働隊指揮官 コルネリアス・ルッツ
[2/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
、その事は」
司令長官を諌めようとしたリューネブルク中将に司令長官は首を振って言葉を遮った。

「そうじゃないんです、リューネブルク中将。私は彼の事を惜しんでいるわけではない。いや、やはり惜しんでいるのかな」
戸惑いがちにそう言うと司令長官は俺の方を見た。

「トゥルナイゼン少将、少将は英雄になりたいですか?」
突然の質問だった。司令長官は穏やかに笑みを浮かべている。からかっている訳ではないようだ。皆の視線に困惑したし気恥ずかしさも感じたが正直に答えるべきだろう。

「なりたいと思ったことは有ります」
俺の答えに司令長官は頷いた。
「ローエングラム伯は英雄でした。彼は皇帝になろうとした。夢を見る事は出来てもそのために努力し続ける事は難しい。だが彼はそれを行う事が出来た……。軍の頂点に立ち、皇帝になる……。もう少しで玉座に手が届くところにまで行きました」

「しかし、閣下がいました」
リューネブルク中将が言葉を挟んだ。
「そうですね。私が彼の夢を阻んだ、何故そうなったのか……」


「十年前、私はこの国を変えたいと思った。同じ頃、ローエングラム伯は皇帝になろうと思った」
「……」
十年前……。司令長官は両親を殺され、ローエングラム伯は姉を後宮に連れ去られた。彼の性格では名誉に思うなどと言う事は無かっただろう。

「私はこの国を変える事が出来るのであれば彼に協力しても良いと思っていました」
「閣下! 滅多な事を言われますな! 御自身のお立場をお考えください」

周囲が唖然とする中、ワルトハイム参謀長が声を大にして司令長官を窘めた。同感だ、一つ間違えば司令長官とて反逆罪に問われかねない。だが司令長官は気にする様子もなく言葉を続けた。

「何故私達は協力する事が出来なかったのか……」
「両雄並び立たず、と言います。ローエングラム伯が英雄なら閣下も英雄です。こうならざるを得なかったのでしょう」
リューネブルク中将の言葉に俺も同感だ。帝国は二人の英雄を共存させるほど広くは無かったと言うことだ。

「英雄? 私は英雄なんかじゃありませんよ」
司令長官は心外だと言うようにリューネブルク中将に言い返した。
「軍を退役して弁護士か官僚になる事を夢見ている人間が英雄なんかの筈が無い。私はただの凡人です」

生真面目な口調だった。司令長官は本気で自分が凡人だと思っているようだ。妙な気分だった、司令長官が英雄で無いのなら俺達はなんなのだろう。思わずグリルパルツァー、クナップシュタイン少将を見た。彼らも何処と無く困惑している。

「閣下が凡人なら小官などは大凡人ですな」
ふざけたような言葉を出したのはリューネブルク中将だった。重くなりがちな空気を変えようとしたのかもしれない。もっとも笑う人間は誰も居なかった。司
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ