暁 〜小説投稿サイト〜
銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百二話 別働隊指揮官 コルネリアス・ルッツ
[1/6]
[8]
前話
[1]
次
最後
[2]
次話
帝国暦 488年 1月26日 レンテンベルク要塞 イザーク・フェルナンド・フォン・トゥルナイゼン
貴族連合軍が辺境星域の回復に乗り出した。それ以来レンテンベルク要塞は目に見えない緊張感に、興奮に囚われている。早ければ今月中にも辺境星域で大規模な会戦が発生するだろう。
敵の総指揮官はリッテンハイム侯だ。それなりの覚悟で出てくるのだろうから油断は出来ない。おそらくは辺境星域がどちらのものになるか、その帰趨を決する戦いになるはずだ。
両軍合わせて十五万隻に及ぶ艦隊が戦うことになる。シャンタウ星域の会戦には及ばないが大会戦である事は間違いない。こちらはルッツ提督が指揮を執るがルッツ提督は今どんな気持なのか……。
ヴァレンシュタイン司令長官はルッツ提督に対して“信頼している”、“思うように戦ってください”と言ったそうだ。羨ましい事だ、それほどの信頼を司令長官から預けられるとは。
自分がその立場ならどうだろう。不安も有るだろうが昂ぶりも有るに違いない。軍人になった以上、歴史に残る大会戦に参加する、ましてやその総指揮を採るなどこれ以上は考えられない栄誉と言って良い。
此処二日ほど司令長官は考え込んでいる事が多い。最初はルッツ提督のことで不安を抱えているのかと思った。しかし不安そうな様子ではない、ただ何かを考えている。そして時々溜息を吐く。
辺境星域で起きるであろう戦いの事ではないのかもしれない、確証はないが何となくそう思えるのだ。知りたいとは思うがどう問いかければよいのか……。
司令長官は今日も要塞の司令室で椅子に座って何かを考えている。フィッツシモンズ中佐が渡す書類に決裁をしながら時折手を止め考え込んでいるのだ。そして俺を始めクルーゼンシュテルン副司令官、ワルトハイム参謀長、グリルパルツァー、クナップシュタイン少将はそんな司令長官を黙ってみている。皆司令長官の様子を気にかけている。
「何を考えていらっしゃるのです」
リューネブルク中将が躊躇いがちに司令長官に声をかけた。中将は司令長官との付き合いが長い。俺などは黙って見ているしかないが中将はそうではない。羨ましい事だ。
「……ローエングラム伯の事を考えていました」
「……」
「伯なら今頃は会戦を前に昂揚していただろうと」
「……」
瞬時にして司令室に緊張が走った。問いかけたリューネブルク中将だけではない、副官のフィッツシモンズ中佐も絶句している。皆声を出せなかった。司令長官はローエングラム伯の事を考えていた。司令長官にとってローエングラム伯とは何なのだろう。
彼の所為で命を落としかけた、にもかかわらず司令長官からは伯に対する嫌悪や侮蔑の言葉は聞こえてこない。やはり何処かで伯を処断したくないと考えているのだろうか。
「……閣下
[8]
前話
[1]
次
最後
[2]
次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]
違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
しおりを解除
[7]
小説案内ページ
[0]
目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約
/
プライバシーポリシー
利用マニュアル
/
ヘルプ
/
ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ