人形-マリオネット-part3/残酷な真実
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この国の事情は伝えられていなかったはずだ。いつ、そんな話を彼女が知った?
「今のあなたなら、あたしと一緒にこの星を出て、地球に帰ることだってできるはずでしょ?こんな無関係の世界から…」
「…違う。無関係なんかじゃない。だって今の俺は…」
ウルトラマンでもあり、ルイズの使い魔でもあるんだ。言葉にしなかったが、この世界で戦う確かな理由がある。だから、無関係のようで、決して無関係なんかじゃない。
しかしハルナは、サイトの答えを許容するそぶりさえ見せようとしなかった。
「じゃあ、あたしとの約束はどうなるのさ。サイト…あんたがそんな風だから……あたしは…」
『彼女、なにか様子がおかしいぞ』
そんなハルナに、ゼロはサイトに言った。ウルトラ戦士としての勘から、今の彼女が異常であることを警告する。
「…いや、いいさ…この星に残るか出て行くか…それを決めるのはサイト自身だけ。あたしの意思は関係ない…………いいのよ、もしルイズの方を意識してるのなら…そうしても……」
そう言えば、ぶつぶつと呟く彼女の口調に妙な違和感がある。
少し口調が…乱暴になり始めていないだろうか?
あたし?それに…『サイト』?いつの間にか呼び捨てにしてきている。ハルナは、サイトのことを呼び捨てにしてこないはずだ。
ハルナにしては、声質が違う。声自体はハルナそのものだが、まるでこちらを挑発してくるような声だ。そして…
『一緒にこの星を出て地球に帰ることができる』?
まるで、サイトが星の大気圏外に出ても平気な奴だと言うような言い方だ。さっきから異様な様子の彼女といい……。
「君は…本当にハルナなのか?」
サイトが恐る恐る尋ねる。
「そう…あたしは…ハルナ。でも…………」
そこでハルナは言葉を切った。昼時だというのに、休館日ということもあって中が殆ど真っ暗な劇場内に、気味の悪い空気が周囲を包み込み始める。
「あたしは…高凪春奈の心の闇そのものでもある。その心の闇が…
…高凪春奈としての心を…殺したんだ。
全部…あんたのせいだよ。サイト」
「俺の……せい?」
「教えてやるよ、サイト」
どういうことだと言う前に、ハルナはサイトに向けて呪詛のような言葉を続けた。
「お前がいなくなってすぐに…私は『高凪春奈』としての自分を奪われた」
「!!」
ハルナはついにサイトの方を振り返る。そのとき、サイトはぞっとした。
まるで死人のような光のない目つきをサイトに向けていたのだ。
「操り人形として…利用されるために」
その瞬間のことだった。
振り返った瞬間の彼女の体が、紫と黒の混じったオーラに包まれ始める。そのオーラは彼女を包み込み、彼女自身をまったく別の姿へと変貌させる。
夢であってほしかった。夢は眠っている間しか覚えられず、悪夢であっても目覚めれば忘れられる。
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