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俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
59.第九地獄・死中活界
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付いて舌打ちし、すぐさまその場から離れた。直後、オーネストのいた空間をブレスが通り抜け、視界が白熱に染まる。

 真空の刃は黒竜の羽ばたきで発生した風の壁によって威力を減退され、翼のはためきと同時に照準を定めた黒竜のブレスがオーネストに迫ったのだ。状況だけ見れば、オーネストが一度攻撃する間に黒竜は二つの行動をしたことになる。翼と首をそれぞれ独立した武器として使うことによって相手より優位に行動している。
 俺も隙を突いて鎌による死の斬撃を放っているが、回避と攻撃を同時にされるのでオーネストと同じ結果に終わっている。

 自分の体が持つ特性を熟知し、人間の行動を学習した黒竜の鉄壁の戦法には驚かされる。

 真空の刃、真空の爆弾、空気の壁など風と空気を規格外の威力で圧縮した多彩な広域攻撃。
 長い首によって確保された広すぎる射角を誇る、一撃必塵の超火力ブレスによる遠距離攻撃。
 冒険者が装備する一級の武器でさえ弾かれる強靭な鱗、爪、角などの頑強な肉体。
 巨体に似合わぬ驚異的な俊敏性と反射速度、そして的確な思考力。
 更には数段の変身に加えて複数魔石所持などの芸の多彩さ。

 変身するたびに隙が無くなり、戦うほどに動きを覚えられていく。
 だから、あれを葬るにはあちらも知らない不意の一撃で全てを決するしかない。
 二人だけで倒すには、それしかない。

 複雑に入り組んだ鎖の結界も、黒竜は所々邪魔な部分を破壊しながら移動している。翼が引っかかってしまったなどと半端なミスは一切ないし、恐れるに足らずとばかりに自在に隙間を潜り抜けてはこちらやオーネストに攻撃を仕掛けてきた。
 おかげでこちらは黒竜に手が届かず、黒竜は安全圏からじわじわとこちらの体力を削れる訳だ。俺も『死望忌願』に近づいたことで無茶な力を発揮しているが、それも無尽蔵なものではない。むしろ、この力が途切れた時こそが俺の死ぬ時だろう。あちらはリスクを冒さずずっとああして嬲っていれば――。

「――?」

 微かに、引っかかった。

 確かに黒竜はわざわざ接近戦に持ち込まずとも遠距離で攻撃していれば負けはしない。オーネストの速度は黒竜に追いついてこそいるものの、完全な捨て身の戦法を断念したオーネストには致命の一撃を黒竜に叩き込む隙を掴みかねている。

 だが、攻撃が消極的過ぎるのではないか?
 俺はともかくとして、黒竜はオーネストの本気の時に発揮する化け物染みた爆発力と未知の部分を知っている筈だ。魔法を解禁したらしいオーネストは現在風だけで戦っているが、その動きは少しずつ風の特性や鋭さが増幅して強力なものになってきている。
 黒竜がそうであるように、オーネストの学習能力も人知を超えている。発想力、応用性、持続性のどれをとっても化け物クラスの思考力と学習能力
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