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俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
59.第九地獄・死中活界
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の形に押し留める。ポーションはもう手元にないので有難い話だ。感覚も触覚以外は殆どなかった。それはそれで、明らかに危険な領域に文字通り手を突っ込んでいるのだが。

 俺は構わずその手に『断罪之鎌』を構え、黒竜に斬撃を飛ばして牽制しながら叫んだ。

「オーネストッ!!聞こえるかッ!!」
「何だッ!!」
「黒竜の魔石の在処だッ!!」

 オーネストの返答が来るか否かのタイミングで黒竜が鎖を掻い潜って強烈な旋風を飛ばしてくるのを別の鎖に飛んで回避し、更に追撃で迫った熱戦のようなブレスを手元の鎖によって回避しながら跳ね回る。もはや会話が成立していることが奇跡だ。黒竜が更に広範囲の追撃を放とうとするが、オーネストが死角から黒竜に回り込んだために辛うじて余裕が生まれる。

 尤も――俺が引き出した事実は、黒竜が本当の本当に前代未聞の怪物であることの証左だったのだが。

「黒竜の魔石なんだがな!!こいつ、魔石が『三つ』あるッ!!」
「ほう、とうとう魔物の大原則まで破ってきたわけか……ッ!!」

 魔物の体に魔石は一つしかない、という原則を、恐らく歴史上初めてこの黒竜は覆した。
 魔石は魔物の魂と肉体両方の中核であることは言わずもがな、魔物の最大の弱点でもある。極論を言えば魔石さえ破壊出来ればどんな巨大な魔物でも容易に殺害することが出来る。

 そしてこの黒竜は、その弱点を分散することで一撃死のリスクを分散するという極めて合理的かつ悪魔的な進化を遂げていた。

「不思議には思ってた……あの巨大竜が抱え込む魔石となれば人間が抱えられないほど巨大になる筈なのに、巨大化ではなく小型化していたことをなッ!!」
「脳に一つ!!心臓部分に一つ!!あと、翼の付け根部分にもう一つ!!恐らく相互互換機能あり!!ただ、それでも魔石は魔石だ!!ぶっ壊せばその分だけ奴の命のストックは減るし、戦闘能力も下がる!!どれからぶち壊すッ!?」
「翼の根元だッ!そこに魔石があるという事は、巨体を浮かせる四枚羽にそれだけ他の器官以上のエネルギーを送る必要があるという事だ!!背中を抉って機動力を削ぎ、そのまま心臓部分の魔石を破壊するッ!!」
「頭はッ!?」
「あいつの頭はそれ自体が武器だッ!!狙って壊せる状況じゃないッ!!」

 言われて確かに納得する。恐らく眼球を抉られた過去からだろう、黒竜は頭部周辺の反応速度や角を利用した動きが達人級に巧い。頭蓋骨の強度も鱗とは比べ物にならないだろうし、むしろ破壊するのが最も難しい部位だろう。

 黒竜の攻撃による轟音に掻き消されぬよう声を張り上げたオーネストが黒竜の翼を切り裂こうと接近し、黒竜の放つ真空の刃と同じ飛ぶ斬撃を風で再現する。黒竜の放つそれの大きさと遜色ない威力で放たれたそれを見て、オーネストは瞬時に何かに気
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