59.第九地獄・死中活界
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りはしかし、やる気になった。ならば死にぞこないもやる気を出さねばなるまい。
元より、その為に俺は立ち上がり、右の眼を抉ったのだ。
(あれを倒すには魔石を破壊するっきゃないんだけど、魔石ねぇ……大抵は体の中心に近い心臓あたりに存在するものだけど――探るか)
意識を沈め、存在しない鎖を辿る――かつて戯れに自分の『死』を手繰った感覚が手のひらに宿った。あの時は気付かなかったが、今なら分かる。これは自分や他人の生命を手繰る鎖だ。前から生死の気配は不思議と感受出来たが、これはその曖昧な感覚を技術となるまで絞った代物。
瞬間、俺の魂の感覚だけが現実世界の時間と空間を解脱し、非物質的領域に至る。
存在の曖昧な淡い鎖が目の前に突き出される。
そのすべてが少しずつ違った形状と気質を纏っていた。
冷たい鎖――リージュだ。精緻で雅やかだが、芯は強い。
複雑に編み込まれた鎖――これはユグーか。随分複雑な事情があるらしい。
これはオーネスト――おい、鎖に『触るな』って札が張り付いてんぞ。あいつ何でもありか。
これも違う、これも、これも、これも――余分な鎖を掻き分け、数多の鎖の中を探す。
(――これだ)
一際禍々しく、血と茨に塗れ、周囲の鎖をも強引に引き千切るかのように堂々と、それはあった。鎖を掴むと茨が手の平に王者なく突き刺さり激痛が奔り、しかも鎖そのものが焼けるように熱い。
いや、単に痛いという領域ではない。夥しいまでの生命を荼毘に付し、塵に帰してきた規格外の化け物が抱え込んだ魂の性質は、もはや呪怨という名の毒に等しい。棘を通して俺の全身に毛細血管の端まで爆発するような激痛が迸った。
(ッ!!気配を手繰っただけでこの有様か!しかし、その程度では止まってやれん……ッ!!)
まるで腕が溶鉱炉にでも突っ込まれて融解しているかのような錯覚を覚えても、『死望忌願』としての力が俺の手に更なる握力を生み出し、鎖を強引に引き寄せる。
あの大馬鹿がやっと自分の未来を背負ったのだ。
空の雲より朧な俺の命もまた、自らの未来くらいは背負わないと割に合わない。
生きることは苦痛の連続だ。
これは、そのほんの一部に過ぎない。
だから――。
『てめぇの根源。心臓。魂の在処を……見せやがれぇぇぇぇぇーーーーーーッ!!』
刹那、言葉や視覚を越えた第六感的な情報が脳に叩き込まれると同時に目の前の鎖は視界から消失し、そこで黒竜に向かって駆けだした自分としての物質的領域が戻ってくる。現実世界には存在しない刹那以下の情報世界から、俺は情報を引きずり出した。
代償として鎖を掴んだ右手が血を噴出して無残に爛れるが、爛れた肉ごと『死望忌願』の呪帯が包み込み、人間
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