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俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
59.第九地獄・死中活界
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悟はやめて泥中で足掻くように生命(いのち)に齧りつけ」
「……………やれるだけやるわ」

 最後の一つにアズは一瞬呆け、少し考え、厳しい顔つきで答えた。
 人にどうこう言ってはいるが、アズとて自分の命に執着する意識はほぼ存在しない。
 生に対する執着の差は死闘の重要な局面で必ず決定的な差を生み出す。
 言ってしまえばオーネストなりの意趣返し。
 ただし、アズはその意味を正しく理解し、自分にそこまで出来るか確信を持てなかったから曖昧な答えを返した。

 アズらしい、とオーネストは思った。
 そして、アズがそれでも結局やってくれる気がした。

「俺はやりたいようにやる。お前もやりたいようにやれ」
「元より俺はそのつもりだよ?さぁて、久しぶりにイカれた騒霊たちの……いいや、違うな」

 言いかけ、アズはすこし考えた。
 騒霊(ゴースト)には実体がないが、今の自分たちは生者として戦おうとしている。
 なれば、騒霊は相応しくない。自分たちに相応しいのは、あれしかない。

「――『狂闘士(ベルゼルガ)』と『告死天使(アズライール)』の最高にサイコで見苦しい醜劇をとくとご覧あれ、ってなぁッ!!」
「――血反吐と臓腑(ぞうふ)をぶちまけて死にな、クソッタレ」

 1柱の化け物と、化け物と呼ばれた二人の人間が、激突した。



 = =



 熱意と脱力の中間。
 存在と消滅の狭間。
 生存と死別の隙間。

 それが今の俺、今のアズライール。

 オーネストが疾風となってその場を離れると同時に、俺は鎖の上を疾走していた。
 それと全く同時のタイミングに、黒竜が動き出す。

「ギュオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!」

 ちっぽけな人間など軽々しく吹き飛ばす重厚で殺意に満ち溢れた咆哮を聞いたのは、一体何度目となるだろうか。より『深く』なってこそ更に実感する、黒竜の底なしの存在感。成程、個としてここまで洗練され、凝縮された一つの意志とはそれ自体が呪のようなものだ。

 いつだったか、オーネストみたいな滅茶苦茶な男は向こう一億年は現れないだろうとからかった時の事を思い出す。オーネストが人間にとってのそれならば、黒竜とは魔物にとってのそれなのだろう。あれは本当に桁と想像を外れた怪物なのだろう。

 絶対殺を謳う『断罪之鎌』の直撃でも本当に殺しきれるか怪しいまでの生命の輝きは、単に体が強くて偶然現代まで生き残った怪物という過小的な評価で説明しきれない。
 いや、当たれば恐らく死ぬのだろうが、『殺せるイメージに至らない』。
 それだけの存在圧を他人の認識に植え込むほどに強烈なのだ。

 対してこちらは死にたがりと死にぞこないがそれぞれ一人ずつ。
 死にたが
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