15. あいつらの目的 〜赤城〜
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「それじゃあ行ってくるのです!!」
そう言って電さんは、今日も球磨さんと共に遠征に出撃していった。
集積地さんが故郷に戻ってから、もう一週間ほど経過する。あの日、帰り道でわんわん泣いていた電さんは、次の日にはもう笑顔を見せていた。
『ずっと泣いていたら、集積地さんに笑われるのです』
屈託のない笑顔でそう答える電さんの強さには驚かされたが、やはりまだどこかで寂しい気持ちは残っているようで……あの日以来、資材貯蔵庫にはあまり行きたがらなくなっていた。
『ごめんなさいなのです。資材の搬入はお願いしたいのです』
集積地さんがいつ遊びに来てもいいように、資材貯蔵庫の居住スペースを残しているのがマズいのかもしれない。長く続くようなら、居住スペースの片付けを提督に進言したほうがいいかもしれない。
そして私達にも、集積地さんと子鬼さんたち……敵と仲良くなってしまった影響はある。
「わりぃ……提督、出撃はちょっと気が乗らねぇ」
「球磨もだクマ……」
鎮守府内において、深海棲艦に対する士気があからさまに低下していた。これはひとえに、集積地さんと子鬼さんたちと仲良くなってしまったが故だ。誰しも気心の知れた相手と本気の殺し合いなぞ出来るわけがない。たとえそれが戦うために生み出された私たち艦娘であったとしてもだ。
提督もみんなの様子を見て『まぁ無理に出撃することもないでしょ。もうしばらく演習と遠征だけにしとこっか』とあっさりと出撃ボイコットを決断していた。『戦うことの出来ない艦娘と鎮守府』。なんだか周囲の鎮守府にはそう見られているようで、はがゆいやらもどかしいやら……
この件を鳳翔さんに相談してみたことがある。ところが鳳翔さんも
「とは言っても、赤城も子鬼さんと戦いたくはないでしょう?」
と夕食に使うじゃがいもの皮を丁寧に向きながら答えていた。
確かに子鬼さんと戦うなど考えられないことだが……このままでいいのだろうか。度重なる演習と遠征で練度だけは確実に上がってはいるのだが……子鬼さんと戦いたくないというワガママを抱える反面、私の心には『このままではいけないのではないか』という妙な不安感がいつも漂っていた。
天龍さんとの演習が終わった後、気がついたら私は執務室に向かっていた。別に相談というほどではないのだが……なんとなく、今の不安感を提督には話しておいたほうがいいような気がしたからだ。
「とんとん。提督、いらっしゃいますか?」
「いいよー。入って」
「失礼します」
ドアノブに手を掛ける度に聞こえてくる天龍さんの『フフ……怖いか?』もだいぶ慣れた。頭の中で『わーこわーい』と適当に相槌を打った後、ドアを開く。ドアの向こう側、執務室の中には、提督と大淀さんに混
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